「新しい血」シャープ再生なるか アジアマネーが狙う日本のブランド・技術
シャープが国内電機大手で初めて海外企業の傘下に入る。外資の日本企業に対するM&A(企業の合併・買収)はこれまで、大型案件では仏ルノーの日産自動車への資本参加のように“買い手”は主に欧米企業だった。シャープ買収を呼び水に、成長著しいアジア企業が日本の大手企業のブランドや技術を狙ってM&Aを加速させる可能性がある。
“アレルギー”が壁に
「104年の歴史を持つ企業(シャープ)が、なぜ台湾企業と提携するのか、と思う人がいるだろう」
鴻海精密工業の郭台銘会長は2日の記者会見でこう切り出し、「企業は国境のない事業体で、両社はともにグローバル企業だ」と続けた。大手企業がアジアの企業の傘下に入ることへの日本人の“アレルギー”を意識したとみられる。
「アジア企業への偏見が投資を呼び込む際の大きな壁になってきた」(早大ビジネススクールの長内厚准教授)という指摘もあるほどだ。
日本企業に対するM&Aは、件数ではすでにアジア企業が台頭しているとはいえ、金額の合計は大きくない。M&A助言のレコフによると、昨年は北米の企業が88件に対しアジア企業は77件。その一方で、総額になると北米の4015億円に対しアジアは2368億円と半分程度だった。
今回の大型買収が、こうした状況を変える可能性がある。鴻海のシャープへの出資額は3888億円で、アジア企業による日本企業へのM&Aでは過去最大。1985年以降の海外企業の日本企業に対するM&Aで9位になる。
今年すでに5309億円
今年は中国・美的集団による東芝の白物家電事業買収もあって、レコフの集計ではアジア企業による日本企業へのM&Aの総額は3月末までで5309億円と急拡大している。
日本は少子化で国内市場が縮小する中、アジアを含めた海外企業の投資による雇用維持や地域活性化が必要になっている。海外企業によるM&Aなどでの日本国内への投資額を示す対内直接投資残高について、政府は2020年に、12年末から倍増となる35兆円を掲げる。
こうした流れをつくるには、今回の案件の成否が重要になってくる。ルノーによる日産への資本参加は、カルロス・ゴーン氏というしがらみのない経営者による改革の断行につながり、日産は復活した。
郭会長は「企業文化が違うからうまくいく」と強調した。シャープが「新しい血」を取り入れて再生できるかが問われている。(高橋寛次、橋本亮)
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