新日鉄興和不動産、マンション建設し復興後押し 岩手・釜石で計画

 
新日鉄興和不動産が整備した復興公営住宅。住民間のコミュニティー形成を重視した点が売り物だ=岩手県釜石市

 ■【東日本大震災5年】

 新日鉄住金グループの新日鉄興和不動産(東京都港区)は、岩手県釜石市でマンションの開発事業に再び取り組む。2011年3月に分譲マンション「リビオ上中島」(7階建て、28戸)を供給しており、それに次ぐ第2弾となる。岩手県最大規模の復興公営住宅(総戸数210戸)を供給するなど釜石市の再生に深く携わっており、新プロジェクトを通じ東日本大震災からの復興活動を後押しする。

 第2弾のマンションの着工時期・規模など詳細な計画は工事費の高騰もあって、現段階では決まっていない。ただ、釜石市は19年にラグビー・ワールドカップの会場となるなど復興を象徴する場所として注目されているだけに、できるだけ早い時期に計画を固め、活性化に寄与したい考えだ。

 また、釜石市は新日鉄住金の所有地で子育て支援施設の整備計画を明らかにしており、新日鉄住金グループの一員としてこの計画に協力する予定だ。

 新日鉄住金は事業を通じて釜石市と密接な関係にあることから、新日鉄興和不動産も震災直後から同市の再生に深く携わってきた。

 代表事例が新日鉄住金が所有する土地を活用して、2期に分けて整備した復興住宅。事業化に当たっては「阪神大震災で高齢者のひきこもり問題が顕在化した点を考慮した」(鈴木誠治・新日鉄興和不動産釜石事業所長)。1995年に発生した阪神大震災では20年を経た現在も、復興住宅での孤独死が後を絶たないためで、コミュニティーの形成を重視した空間とした。

 具体的には高齢者や単身者が気軽に交流できるよう、入居者だけではなく地域住民も含め、180人が一堂に利用できる集会室を設置。一部住戸でバルコニーの隔て板を取り払うなどの工夫もしている。

 このほか、復興に向けたさまざまなアイデアも募った。具現化したプランの一つが、鉄鋼スラグを活用して高台への避難経路を整備する。防災マウンドと呼ばれており、鉄鋼製造工程の副産物として発生する鉄鋼スラグを土手のように形成、津波が発生した場合に防災マウンドに登って高台へと避難できるようにする。市民の声に耳を傾けながらグループの力を活用して復興を支援していく考えだ。