学会や講演会などで著名な日本の技術者に目星を付け、接触するのが産業スパイの手口の一つ。技術者は勤務先の企業から製造ノウハウなど技術の根幹部分を持ち出し、退職後に売り渡す。
こうした行為は「不正競争防止法」に違反する行為だが、退職者の行動まで企業が把握するのは難しく、立証には高い壁が立ちはだかる。
経済産業省が今年7月に約1万社を対象に行ったアンケートでは、役員にライバル企業への転職を禁止する契約をしている企業は、社外秘の技術が多い製造業大企業で24.5%にすぎなかった。
大手電機各社では退職後の技術者にも誓約書を提出させるなどして技術流出の防止に努めているものの、「書類などが持ち出されるのならともかく、技術者の頭の中に入っているものまでは流出を阻止できない」(大手電機関係者)のが実態。大手自動車部品メーカー幹部は「先手を打って新技術を作り続けるしかない」と話す。