高機能鋼板の製造技術を不正に取得したとして、新日本製鉄(現新日鉄住金)が韓国鉄鋼最大手のポスコを訴えた裁判が25日、東京地裁で始まる。円高などを背景に世界市場での日本企業の存在感低下は著しいが、成長の原動力となる技術情報の流出で競争力を失ったこともその一因とされる。政府は「産業スパイ天国」の汚名返上に向けて対策に乗り出したが、有効策は見いだせていない。
立証に高い壁
「極めて重要な裁判。入念に準備してきた成果を使いながら、粛々と対応する」。新日鉄住金の友野宏社長は24日の会見で、法廷闘争に強い自信をのぞかせた。
日韓のトップ企業による異例の法廷闘争は、国際的な企業間競争の“闇”の部分であるスパイ行為の一端を表面化させた格好だが、最先端技術をめぐる産業スパイ行為は後を絶たない。
米司法省は今月18日、米デュポンから企業機密を盗んだなどとして、韓国の大手繊維・化学企業、コーロンと同社幹部らが起訴されたと発表したが、コーロンは日本の帝人も標的にし、産業スパイ活動を続けていたという。