付加価値の高い鋼材の生産技術が盗まれたとして、新日本製鉄が韓国の鉄鋼大手、ポスコと同社日本法人、新日鉄元社員などを提訴した。
昭和40年代に開発し、門外不出としてきた技術だけに、新日鉄の怒りは強い。ポスコに対し、1千億円の損害賠償などを求めている。
ポスコは争う構えだが、敗訴すれば高収益な同事業分野からの撤退は避けられない。産業スパイの代償の大きさを知らしめる裁判となるか。
「やはりそうだったのか」
韓国内でポスコが起こした裁判での証言の一つから、ある新日鉄幹部は、それまでのポスコへの疑念が、明確な不正だと確信。昨年末、証拠保全手続きを申し立て、裁判所が元社員の保有していた“動かぬ証拠”を押さえた。
新日鉄は、「時効の懸念もあり、早期に提訴が必要」(幹部)と判断。4月に不正競争防止法(営業秘密の不正取得行為)違反で、ポスコなどを東京地裁に提訴した。日本企業が、不正な技術流出で外国企業を訴える事例としては最大規模だ。