■洋風料理の外食が特別でない時代の難しさ
機内食事業をルーツにもち、今でもロイヤルが運営する空港レストランなど多い印象からでしょうか、「ロイヤルホスト」のお店には少し特別感があるように感じます。
温かみのある内装に店舗によってはじゅうたん敷き。スタッフの方の白いユニフォームは清潔感があってベテランの方が多い印象も老舗レストランのようです。特筆すべきは、ダイニングフロアから見える厨房にコック帽をかぶったシェフがいることです。厨房業務の合理化が進み完全にバックヤードの作業場と化した現代のファミレス業態でこれは間違いなく珍しく、こだわりを感じないわけにはいきません。
もちろんセントラルキッチンのパイオニアですから、店内で調理される部分は限られるに違いありませんが、やはり人の手が入ったものをいただける安心感というのはバカにできないように思います。
ただし、マーケティングの側面でみれば近年ブランドポジショニングが中途半端になってしまっていた印象は否めません。昭和の時代はそれ自体に結構な特別感があった、洋風料理を外食するという行為も、年々レストラン業態に多くのプレイヤーが参入し、まして「中食」と呼ばれる外食に負けず劣らずの総菜やお弁当などがコンビニエンスストアなどで豊富に供給される中、相対的にポジショニングが下がってきていました。
そんな中一時期はファミレス業態でも価格競争をしかける向きがありましたが、あくまで「ロイヤルホスト」はアッパーミドル層以上ターゲットということで、そこまで価格を下げずにこだわりの品質を維持してがんばっていたように思います。しかしながら、生活者にはなかなかその差別化部分が十分伝わらず「ちょっと高いファミレス」という曖昧な認識を持たれるようになっていたのではないでしょうか。
■近所で上質な料理を安心して食べられることのありがたみ
でも逆に言えば、こんな時代だからこそ、近所で安心して上質なプロの料理を提供してもらえるという基本的な価値はとても貴重なはずです。
例えば、海外ブランドのファミレスなども、本家のお店に行ってみると衛生面含めて日本人にとっては驚くほどレベルが低かったりして逆に印象に残るぐらいです。
当たり前に高いレベルのサービスを享受していた間は気づきにくいことですが、目の前で閉店してしまう店舗を見ると、嫌が応でもそんなことに思いを致してしまいます。