廣瀬さんの作品の材料も、新聞紙、ボトルのキャップ、レモン、カレー粉、大理石、木、布、写真…と多岐にわたる。表現も絵画、ドローイング、インスタレーション、彫刻、写真と使い分ける。
物理的な境界を超え、異なった文化の交わりにリアル感をもち、具象と抽象の間を行き来しながら、自らの考えがカバーする範囲を一気にではなく、じりじりと広げていく。使う素材を多様に選択していくプロセスは、その探索をよりダイナミックに示す軌跡でもある。つまり表現の多様性は目的ではなく結果である。
「どうして、この素材を使ったのか?どうして、このようなメタファーを使ったのか?そういうのがすぐ想像できる作品は、つまらない。やっぱり、一筋縄ではいかない作品がプロたちの間では評価が高いですね」と廣瀬さんは話す。
ここでいうプロとは、コンテンポラリーアーティストや批評家のことを指す。彼らはアートマーケットのディーラーとは趣を異にしているのだ。最近、誰それのコンテンポラリーアート作品がオークションにて何十億円で落とされたとの話題が一般のニュースにものぼってくるが、これで高値がつくことがアート世界の全てではないのは言うまでもない。廣瀬さんは次のように話す。
「イタリアのギャラリーはニューヨークのギャラリーほどの資金力はないですが、コンテンポラリーアートの世界でそれなりの実力を発揮しています。またヴェネツィアビエンナーレやドイツのドクメンタが、今世紀に入って力を発揮してきたバーゼルのアートフェアなどと一線を画して市場と距離をもっているのは、アートの世界にとって意味のあることでしょう」
アートにとって一番大事なのは?
「オリジナリティに尽きます。それも目に見えるカタチではなく、作品を生み出す想念自体にオリジナリティがあることが大事です」