政府の直接発注は1%未満
DTVSはスタートアップ308社に対しアンケートを実施しました。その結果、95%が「官公庁・地方自治体に対する自社サービスの提供によって、品質向上を実現する」と回答しました。デジタル領域に強みを持つスタートアップを活用することによって行政サービスの改善につながると感じていることが読み取れました。しかし、実際は創業10年未満の新規中小企業者を対象とした政府の直接発注の割合は、全体の1%にも達していません。
スタートアップ向けのアンケートによると行政手続きのDX化を進めるに当たって壁となっている上位項目は「手続きが煩雑」「実績主義」「入札要件」「必要な情報にアクセスできていない」などです。スタートアップの力を行政に活用するためには、これらを打破することが必要です。
スタートアップサービスも徐々に活用
こうした中、スタートアップによるサービスが行政でも徐々に活用され始めています。経済産業省はクラウド型名刺管理サービスを導入しているほか、大阪府泉大津市は高齢者向け非対面型のコミュニケーションツールとして動画・写真共有サービスに着目し、適切な行政情報を届けるための実証実験を開始しています。
一連のサービスの共通点は、行政を意識して始めたのではなく民間向けにスタートしたものが良質なので、結果として行政に採用されたことです。
行政に寄与するDX関連のベンチャーは「既存の行政手続きのデジタル化・効率化支援」「公共機関・インフラ整備」「国民・地域住民とのコミュニケーション」「個人情報保護・サイバーセキュリティ」「DX人材の育成・採用」という5つの領域の支援に携わっており、今回は領域ごとに5つの会社を紹介します。
デジタル身分証アプリ
TRUSTDOCK(東京都千代田区)はデジタル身分証アプリを提供しています。マイナンバーカードの公的個人認証と、電子的に本人確認手続きを行うeKYCの双方に対応しており、運転免許証などの身分証以外では、携帯電話の契約情報や銀行口座を介した本人確認が可能です。また、行政側の本人確認手続きに要するコストを削減するため、関係省庁などと連携し、ガイドラインの策定などに携わっています。
最短60秒でリスク情報を配信
JX通信社(東京都千代田区)が提供しているのは、ビッグデータに基づくリスクセンサー「FASTALERT」です。災害や事故、風評被害、炎上など大きな損害につながる可能性が高いリスク情報をいち早く察知します。常に監視しているSNSや独自アプリなどから自社に関連するリスク情報だけを入手することができ、リスクが起きてから配信に至るまでの時間は最短60秒で、損害を最小限に食い止めることができます。