ローカリゼーションマップ

フランスから日本に帰って心のチャージを 自分に正直に生きる強さ 塚嵜友子さん

安西洋之
安西洋之

 塚嵜さんが選んだインターン先は、彼女が大学院で勉強した「クリエティブとソーシャルイノベーション」がバッチリと活かせるところだからだ。社会に変化を導くには文化創造が必須だ。それには理性だけでなく感覚的なところが鍵になる。彼女が触れた香りの仕事は、まさにその世界だ。

 しかも、世界中の企業が環境上の制約を前に社会価値の転換に向き合っている前線を経験する場だ。

 当初、塚嵜さんは環境NGOやアートを核とした文化ビジネスが卒業後の自分の職場になるだろうと想定していたようだ。ただ、ご本人は気づいていなかったようだが、新しいラグジュアリーとソーシャルイノベーションの結びつきをリサーチしてきたぼくの目に、彼女が積み重ねている経験は王道にみえる。

 「日本で仕事して次を考えていますか?」と聞いてみた。「また機会があれば、もう一度ヨーロッパで働きたいです。というのも、フランスが嫌いになって帰りたいわけではないのです。生活の中で使ったりしているものへのこだわりと、それを家族や友達と楽しむ余裕を持つ文化が好きです」と即答がきた。

 塚嵜さんのことは彼女が大学生の頃から知っているが、自分にとても正直に生きているようにみえる。そう生きられるのが一番強い。

安西洋之(あんざい・ひろゆき)
安西洋之(あんざい・ひろゆき) モバイルクルーズ株式会社代表取締役
De-Tales ltdデイレクター
ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンゲリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。書籍に『「メイド・イン・イタリー」はなぜ強いのか?:世界を魅了する<意味>の戦略的デザイン』『イタリアで福島は』『世界の中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』。共著に『デザインの次に来るもの』『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』。監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。
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ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解すると共に、コンテクストの構築にも貢献するアプローチ。

ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。

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