塚嵜さんが選んだインターン先は、彼女が大学院で勉強した「クリエティブとソーシャルイノベーション」がバッチリと活かせるところだからだ。社会に変化を導くには文化創造が必須だ。それには理性だけでなく感覚的なところが鍵になる。彼女が触れた香りの仕事は、まさにその世界だ。
しかも、世界中の企業が環境上の制約を前に社会価値の転換に向き合っている前線を経験する場だ。
当初、塚嵜さんは環境NGOやアートを核とした文化ビジネスが卒業後の自分の職場になるだろうと想定していたようだ。ただ、ご本人は気づいていなかったようだが、新しいラグジュアリーとソーシャルイノベーションの結びつきをリサーチしてきたぼくの目に、彼女が積み重ねている経験は王道にみえる。
「日本で仕事して次を考えていますか?」と聞いてみた。「また機会があれば、もう一度ヨーロッパで働きたいです。というのも、フランスが嫌いになって帰りたいわけではないのです。生活の中で使ったりしているものへのこだわりと、それを家族や友達と楽しむ余裕を持つ文化が好きです」と即答がきた。
塚嵜さんのことは彼女が大学生の頃から知っているが、自分にとても正直に生きているようにみえる。そう生きられるのが一番強い。
【ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。