元受付嬢CEOの視線

なぜオフィスは移転すべきなのか 増床で済ませないほうがいい理由

橋本真里子
橋本真里子

 採用のことは正直、あんまり意識しませんでした。外面的なところに魅力を感じてもらうより、中で働いてくれているみんながいい表情で働いてくれている姿に共感して入社を決めてくれることを期待しています。

 新たに優秀な人材を採用するためのオフィス。今の従業員のためのオフィス。どちらも戦略です。大切なのは、明確な目的であり、それを明言することなのかもしれません。

 テレワーク加速…オフィスは将来、不要になる?

 テレワーク(リモートワーク)がメインになったらオフィス自体が不要になるのでは? そんな声もあるかもしれません。しかし私は「なくならない」と思います。情報がすべてクラウド上で管理され、1人1人にリモート端末が与えられたら、どこでも働けるようになります。しかし、それでもオフィスの存在意義はなくならないでしょう。

 理由はいろいろありますが、「神は細部に宿る」ではないですが、「仕事は細部に実る」と考えています。大まかなコミュニケーションや業務の報告はオンラインでも問題ないでしょうが、企業は、「ちょっとこれ聞きたい」とか「ちょっとした雑談」という些細なコミュニケーションに支えられていて、成長していくと思います。この「ちょっと」が実は非常に大切なのです。もともと仕事は「はたにいる人をらくにする」という語源から「働く」が生まれているとも言われています。例えば、受注した喜びを共に分かち合う。一緒にランチをしながら、談笑する。こういったことが企業にとっては貴重な「活動」だと思います。やはり仕事をする時には「はた=そば」に人がいて、コミュニケーションを図りながら相手のためを思い、活動するからこそ捗るのではないでしょうか。

 そして「通勤」も一つの「活動」です。在宅勤務でずっと引きこもっているのは精神的な健康にもいい影響は及ぼさないと思います。動き、会話し、働く。日本人にはこういった文化が根付いていると感じます。オフィスは大事なコミュニケーションを生む空間なのです。

橋本真里子(はしもと・まりこ)
橋本真里子(はしもと・まりこ) 株式会社RECEPTIONIST 代表取締役CEO
1981年生まれ。三重県鈴鹿市出身。武蔵野女子大学(現・武蔵野大学)英語英米文学科卒業。2005年より、トランスコスモスにて受付のキャリアをスタート。その後USEN、ミクシィやGMOインターネットなど、上場企業5社の受付に従事。受付嬢として11年、のべ120万人以上の接客を担当。長年の受付業務経験を生かしながら、受付の効率化を目指し、16年にRECEPTIONIST(旧ディライテッド)を設立。17年に、クラウド型受付システム「RECEPTIONIST」をリリース。

【元受付嬢CEOの視線】は受付嬢から起業家に転身した橋本真里子さんが“受付と企業の裏側”を紹介する連載コラムです。更新は隔週木曜日。アーカイブはこちら

Recommend

Biz Plus

Ranking

アクセスランキング