加速する仕事着のカジュアル化
「洋服の青山」のお店に行くと、相変わらずスーツやワイシャツなど種類やサイズが豊富ですし、ベルトやビジネスシューズ、カバンを始めとして慶弔用の小物まで、ビジネスマンの装い一切が揃う至れり尽くせりぶりです。またレディース商品も豊富で働く女性が当たり前の時代の要請にも応えていることが伺われます。歴史的にも「洋服の青山」を筆頭にした大手紳士服量販各社が日本のビジネスウエアの中庸なスタイルを提案し続け長年にわたり日本のビジネス服のデファクトスタンダードを定義してきたわけです。つまりTPOに厳しいビジネスシーンで絶対外さない安心感や誰からも違和感をもたれないスタイルを、現実的な価格帯で手に入れることが可能な、なくてはならないお店が紳士服大手量販店だったわけです。
しかしIT企業などを筆頭とする、ビジネスウエアのカジュアル化の流れは加速度をつけて今現在も進行している印象で、今やフォーマルな背広姿の代名詞だった銀行業界にさえ服装のカジュアル化を表明する企業があるほどの急速な変化の流れとなっています。そういう視点から見ると、「洋服の青山」の商品群は、もはやフレッシャーズぐらいしかスーツ姿を見なくなってしまった職場で働く人にとっては、あまり縁のない売り場となってしまったかもしれません。業績面でも「洋服の青山」を運営する「青山商事」創業以来初の赤字決算予測(2020年3月期)が衝撃的ニュースとして伝わっています。
一方でカジュアルウエアにシフトしようにも壮絶なレッドオーシャンの市場が目に見えていておいそれとはいきません。今後の経営戦略のかじ取りが悩ましい局面であることは間違いありません。
現在の取り組みを見る限りはCMや店頭ではEXILEやGENERATIONSなど若い世代にも人気のタレントを起用することであくまで真正面からスーツのカッコ良さやビジネス着としての機能性を訴求しています。オフィシャルスーツサプライヤーの取り組みも、福岡ソフトバンクホークスや北海道日本ハムファイターズ、サンフレッチェ広島などラグビー日本代表だけでなく多くのスポーツチームへの協賛を行っており、あくまでスーツの良さを訴求していく当面の取り組みは継続中であるように見受けられます。