繰り返すが、最近、デザインの論議のなかで審美性が再び脚光を浴びてきたのは、10月21日から3日間、大阪で行われたデザイン学会4D Conference での複数の人による基調講演の内容を聞いても明らかであった。
往々にして、ビジネスやテクノロジーに従事するものとしてのデザインをベースにおくと、企業の組織や製品開発へ審美性がどうコミットするかとのレベルでしか評価されない。
それはそれで重要なのだが、議論の矮小化が避けられず、矮小化は考え方それ自体を脆いものにする。
一方、21世紀は人々がビジネスやテクノロジーに従事するのではなく、ビジネスやテクノロジーが人々、言い換えれば社会に従事するとの逆転の構図を推進していくべき、との意見が出始めている。「ユーザー中心」という考え方も、人々を目的におかなければフェイクである、と。
このような状況下、リトアニアには今年5月、文化省と経済・イノベーション省を横断するカタチで、長期的なデザイン政策を問う審議会が設置された。ルータは9人のメンバーのうちの1人に任命された。デザインが経済発展のためだけでなく、国や社会の行方を定めるにあたり、その有効性が話し合われている。
しかも、まだ記憶にある過去50年(1940-1990)の社会に対する大いなる反省に基づいている。この歴史が逆に今後の強みになるのではないか、と個人的にリトアニアのデザインをフォローしている。
【ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。