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バンダイ最高のMGガンダム登場 ガンプラ集大成「Ver.3.0」徹底レビュー

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バンダイ最高のMGガンダム登場 ガンプラ集大成「Ver.3.0」徹底レビュー

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腰部にハイパーバズーカを装着。フル装備状態の「MGガンダムVer.3.0」((C)創通・サンライズ) 【最新ガンプラ事情】

 テレビアニメ『機動戦士ガンダム』(ファーストガンダム)の放映が始まったのが1979年。以降、膨大な作品群が展開され、さまざまな派生商品を生んできた。中でも最大のヒットといえるのが、ガンダムのプラモデル、いわゆる“ガンプラ”だ。かつては社会現象となるほどの大ブームを起こし、いまなお多くのファンを持つ。

 現在、株式会社バンダイが展開している主なガンプラのラインアップには、1/144スケールで多くのMS(モビルスーツ)がキット化されているHG(ハイグレード)、同じく1/144のサイズながらリアルさと最大級の可動域を追究したRG(リアルグレード)、1/100スケールで内部メカやギミックまでをも精密に再現させたMG(マスターグレード)、究極のガンプラを目指した1/60スケールのハイエンドモデルであるPG(パーフェクトグレード)などがある。

 そして、この8月10日。バンダイが「これまで培ってきた技術の集大成」として発売するのが、「MG 1/100 RX-78-2ガンダムVer.3.0」(4725円)だ。

 RX-78-2は、ファーストガンダムで主人公のアムロ・レイが搭乗した機体。MGでは、初代の「RX-78-2(Ver.1.0)」(1995年)、「Ver.1.5」(2000年)、「Ver.Ka」(2002年)、「Ver.ONE YEAR WAR 0079」(2005年)、「Ver.2.0」(2008年)に次ぐ6度目のキット化となる。

 前作の「Ver.2.0」が発売されてから5年、ガンプラは、どれほどの進化を遂げたのか…。今回は、「MG 1/100 RX-78-2ガンダムVer.3.0」のサンプルキットを一足早く入手。徹底的に検証してみた。

 まず、驚かされるのが、そのパーツの豊富さだ。ランナーは19枚。部品総数は約400点にも及ぶ。これは、「Ver.1.0」の約1.8倍、「Ver.2.0」と比較しても約1.1倍に相当する。

 加えて、成型色も豊富で、装甲部分だけでも、ホワイト系3色、レッド系2色、ブルー系2色、イエローと、塗装をしなくてもリアリティーの高い、兵器感にあふれる仕上がりが表現できるようになっている。

 全体のデザインやプロポーションは、2009年に東京都港区台場で公開され、大人気となった高さ18メートルの実物大ガンダム(現在は東京都江東区のダイバーシティ東京内に展示)に近い。「Ver.3.0」の開発コンセプトの一つは、「あの巨大立像が実際に動き出したらどうなるのか?」というものだったという。

 巨大感を演出するのに役立っているのが、成型色の微妙なトーンの違いによる情報量の拡大、そして、「ムーバブルアーマーシステム」と呼ばれる新しい関節可動技術の導入だ。

 実際に実物大ガンダムをよく見てみると、大腿(だいたい)部や上腕部に装甲のズレがあり、装甲の引き込みやフレームの移動によって生じる隙間などを確認することできる。これが、架空の人型巨大兵器に、「今にも動き出しそう!」というリアリティーを与えているのだ。

 「Ver.3.0」では、この巨大感、リアル感を徹底的に追求。「ムーバブルアーマーシステム」によって、フレームのみならず、装甲にも可動機構を持たせて装甲のズレを再現している。これまでの可動ポイントは本体→腕という2点式だったが、「ムーバブルアーマーシステム」では、本体→可動プレート→腕というように、可動を多層化。これによって、メカニカルな動きが一層リアルになり、ポージング時のディテール、表情の豊かさが格段に増している。

 実際に動かしてみると、関節の曲げ伸ばしに合わせて装甲の一部も追随して動き、絶妙なズレ、隙間が生まれる。これらの可動する外部装甲は、ホワイト系の3つのトーンで色分けされたパーツが分割して動くため、本当に実在する機械が動いているかのような臨場感がある。

 可動箇所、可動範囲はともに、これまでのガンプラと比較しても最大級と言っていいだろう。武器の両手持ちや片膝立ちのポーズ、腰のひねりなど、劇中の人のような動きを完全に再現できる。

 可動に関しては、「Ver.2.0」の段階で、ほぼ完成の域に達していたとも言えるが、「Ver.3.0」では、可動による外部装甲のズレという新しいディテールを加えることによって、単なる動かせるプラモデルに“リアリティー”という新機軸を盛り込んでいる。

 また、これまでのガンプラは、フレーム部分に主にABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂が使われていたが、堅牢な反面、有機溶剤に弱く、塗装にはやや不向きという難点があった。「Ver.3.0」では、フレーム部を一般的なスチロール樹脂の性質を持つ新素材に変更。PS(ポリスチレン)素材と同様に塗装が容易にできるようになっている。

 手のパーツには、2012年末に発売された「MG νガンダム Ver.Ka」から導入され、ユーザーにも好評だった「エモーションマニピュレーターSP」という精密な技術を採用している。

 これは、ABS・PP(ポリプロピレン)素材で、あらかじめランナーに組み込まれており、切り離すだけで組み立ては不要。人間の手と同様に指一本一本の全ての関節が可動する。多彩な手指の表現が可能で、左右どちらの手でも武器類の保持ができるようになっている。

 このほか、胸部排気ダクトのフィンは可動し、コックピットのハッチも開閉可能。頭部バルカン砲は黄色の別パーツで、各スリットも開口されている。コアファイターは劇中と同じくコアブロックに完全変形し、胴体部分にそのまま格納できる。別売の「MG 1/100 RX-78-2ガンダムVer.3.0用 拡張セット」(1575円)に含まれているLEDユニットを取り付ければ、実物大ガンダムと同様に、頭部カメラアイを発光させることも可能だ。

 付属の武器類は、ビームライフル、ハイパーバズーカ、ビームサーベル、ガンダムシールド。シールドの視察窓は開閉可能で、内側にはビームライフルを格納することもできる。それぞれの武器には、手首パーツに取り付けるための突起を出し入れできるギミックがあり、武器の保持性を高めている。付属武器類は基本的な物に限られているが、ビームジャベリンやガンダムハンマーといった特殊な追加武装は、前述の拡張セットに含まれている。

 また、付属のリアリスティックデカールを使用することによって、外装や武器類の各種マーキングはもちろん、フレーム部の金色の金属表現に至るまで、実物大ガンダムのディテールを再現することが可能だ。肘、膝、足首の関節部分のパーツは、ノーマルバージョンとマグネットコーティングバージョンの2種類から選べるようになっており、好みによって付け替えることができる。この辺の設定の細かさも、ファンにとってはうれしい要素だろう。

 接着剤を使わずに組み立てができるスナップフィット、1枚のランナーに複数の成型色や素材を混在させるシステムインジェクションなど、ガンプラは目覚ましい進化を遂げてきたが、今回の「Ver.3.0」は、素材、デザイン、ディテール、可動、ギミックと、あらゆる面において完成度が高く、さすがはバンダイが「現時点におけるガンプラの集大成」と自負するだけのことはある。

 ガンプラ界においてカリスマ的な人気を持つ女性プロモデラーのオオゴシ*トモエ氏は「今回の1/100スケールのVer.3.0は、1/144のRGシリーズと比較してパーツが大きいので、初心者の方でもストレスなく組み立てられるキットだと思います。組み立てるだけで色分けが再現でき、パーツの情報量が豊富なため、十分な完成度が楽しめます。RX-78-2は、人それぞれ『俺のガンダム』という思い入れが強い機体です。MGは過去のキットも並行して生産されていますから、アニメらしさを求めるならばVer.2.0、カトキデザインが好きならばVer.Kaというように、選択肢が増えるのは非常に歓迎すべきことです」と評価する。

 加えて、「組み立ててシールを貼るだけでも十分格好いいキットですが、改造や塗装をして楽しむことができるのもガンプラの魅力です。プロモデラーとして改造や塗装例を提案させていただくならば、外部装甲を開閉可能に改造して内部機構を見せたり、お台場の情景を再現しても面白いでしょう。また、Ver.3.0を塗装してバリエーション機、グレーを基調にした塗装のG-3ガンダムや、赤い機体のキャスバル専用ガンダムにするのも楽しいと思います」と話す。

 それにしても、ファーストガンダムの放映から既に34年。いまだに「RX-78-2」がリメークされ続けている背景はどこにあるのだろうか…。

 模型文化に詳しいフリーライターのあさのまさひこ氏は「ガンプラ発売10周年記念に多色成型パーツを用いたHGを出してから、今のリメークの流れが始まったと言っていいでしょう。以来、その時代のニーズに合わせて、より実在の兵器らしく、次々とディテールが加えられていきました。当初はバンダイが主導する形でしたが、最近は逆に、世の中が求めるガンダム像をバンダイが追い掛けているという感じです。架空の兵器にこれといった完成形はありませんから、クリエーターやイラストレーター、デザイナーらが『もっとこうした方がいいんじゃないか?』という提案を次々と出していって、ディテール、解像度がどんどんと高まっていった。インターネットの普及もあり、ユーザーが求めるガンダムの理想像は日々、進化しているというのが現状です」と解説する。

 そして、「現時点でのデファクトスタンダードとも言えるガンダムのイメージは、お台場の実物大ガンダムです。バンダイは2010年に1/144のRGをスタートさせ、実物大ガンダムをキット化しましたが、1/100スケールで作り込みの要素も大きいMGではキット化されていなかった。あえてアニメらしいフォルムにこだわった5年前のVer.2.0は、今見ると、どうしても古臭く見えてしまう。バンダイとしては、時代のニーズに応えるためにも、ライトユーザーからコアユーザーまで幅広いファン層を持つMGで、RX-78-2をリニューアルさせる必要があったわけです」と話す。

 また、「内部フレームの改造のしにくさなどから、一部には批判的な見方があることも確かですが、現時点における“最高のガンダム”として、大ヒットすることはまず間違いないでしょう」と予測する。

 この10月からはテレビ東京系列で、『ガンダムビルドファイターズ』という新しいテレビアニメもスタートするが、ファースト世代からその子供、ゲームから入った若い世代に至るまで、いまだにファーストガンダムの人気は高い。

 お台場の実物大ガンダムは今や、人気の観光スポットとなっており、この夏休みも連日、全国から多くの人が訪れている。観光客を“参拝客”、熱心なファンを“信者”と置き換えれば、「実物大ガンダム=現代の大仏」という例えも、決して的外れではなさそうだ。

 “御利益”があるかどうかはともかくとして、老若男女を問わず、幅広い層から支持を得ているという点では、まさに“神話的な存在”と言ってもいいだろう。

 もはや、一つの文化とも言えるガンダムの世界観が世代から世代へと引き継がれていく限り、ガンプラの進化にも終わりはないのかもしれない。

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