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期限切れ鶏肉 上海当局、責任者ら5人拘束 食の安全脅かす「中国リスク」再び

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期限切れ鶏肉 上海当局、責任者ら5人拘束 食の安全脅かす「中国リスク」再び

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中国・上海市  中国上海市の食品会社「上海福喜食品」が米ファストフード大手マクドナルドなどに使用期限切れの食肉を使った加工品を販売していた問題で、上海市公安局は7月23日、食品会社の責任者や品質担当幹部ら計5人を刑事拘束したと発表した。違法な生産活動が組織的に行われていたとみて本格的な捜査に着手した。

 国家食品薬品監督管理総局も厳しく対処する方針。業者や監督当局に対する消費者の不信感が高まる中、安全対策を徹底する姿勢をアピールすることで信頼回復を図る狙いがありそうだ。

 菅義偉(すが・よしひで)官房長官(65)は23日の記者会見で「製造された食品については(検疫所が)一時的に輸入を差し止める措置を行っている」と述べ、健康被害の報告はないと説明。厚生労働省は23日、今年7月までの1年間に上海福喜食品から約6000トンの食肉加工品が輸入されていたと明らかにした。

 中国国内で上海福喜食品の鶏肉を取り扱っていたとされたセブン-イレブンやスターバックスなどの日本の運営会社は23日、上海福喜食品の食材を扱っていないことを明らかにした。

 中国メディアによると、公安当局などでつくる合同調査チームは、使用期限切れの鶏肉などを使って加工された「チキンマックナゲット」などのほか、期限が切れ、かびが生えた牛肉でつくられた加工品などを問題の商品として特定した。いずれも6月に生産されており、合計で5108箱分に上ったという。

 上海市の食品監督当局は上海福喜食品に対し、生産や販売先に関する資料提出を要求、問題の商品の流通ルート特定を急いでいるもようだ。(共同/SANKEI EXPRESS

 ≪食の安全脅かす「中国リスク」再び≫

 期限切れ鶏肉を使用した中国の食品会社から食材を仕入れていたのが、日本マクドナルドとファミリーマートだった。2008年の中国製ギョーザ中毒事件以降、信頼回復に取り組んできた日本の食品・流通業界だが、再び食の安全を脅かす結果になった。日本は食材の多くを中国に依存しており、企業対応や検査体制は後手に回っている。

 利益優先、管理後回し

 ファミリーマートの中山勇社長は7月23日朝、東京・池袋の店舗で記者団に囲まれた。3年がかりで実現した新業態店舗のお披露目だったが、記者の質問は中国からの鶏肉輸入問題に集中した。

 「チェック体制に不備はないと思っていた。(取引相手の)経営サイドの信頼性に頼るしかない」

 中山社長は説明に追われた。ファミリーマートと取引を仲介した伊藤忠商事は今年3月以降、中国の現地工場を視察した。安全性の確認を進めてきただけに、どうすれば再発を防げるのか課題が残る。

 さらに冷凍食品をはじめ多くの製品が中国頼みになっているのが日本の食品業界の実情だ。「中国の工場で生産・加工して日本に輸入するのは一般的で、食品業界の中国への依存度は大きい」(流通大手)と苦しい胸の内を明かす。

 中国ではギョーザ中毒事件や粉ミルクの有害物質混入事件など、食品安全に関わる問題が何度も起きてきた。企業は利益を優先し、品質管理を後回しにしている工場が多い。

 「仕入れ先の工場を定期的に訪ね、従業員の様子もチェックしている」。日本に食品を輸入するために中国を飛び回る大手流通業の購買担当者は、こう強調する。

 中国は経済発展に伴い工場の従業員の賃金が毎年1~2割のペースで上昇。企業の経営を圧迫しており、安全管理がおろそかになる下地はさらに広がっている。

 企業に対する地方政府の監視も甘い。庶民の間では「中国企業は(外資系企業よりも)もっと信用できない」(上海市民)との声が多い。

 日本側の検査に限界

 厚生労働省は、検疫所による抜き取り検査の頻度を高めるなど検査体制の強化を検討しているが、今回のように使用期限切れといった問題はチェックしにくい。厚労省の担当者は「現地企業の管理体制やモラルが問われる場合、水際での検査強化だけで対応するのは難しい」との見解を示した。

 食肉の輸入時には、検疫所が残留農薬のほか、サルモネラ菌や大腸菌の付着の有無を検査している。製品に使用期限が記載されている場合は問題ないか確認するが、加工品の原材料までは分からず、記載に虚偽があっても見抜けない。

 今回の問題で厚労省は、食品衛生法に基づく輸入禁止とは別に、上海福喜食品の製品の輸入を一時的に停止し、輸入品があった場合は留め置くよう検疫所に指示した。

 食の安全・監視市民委員会代表の神山美智子弁護士は「政府は、食料品の輸入に関する統一的な規格を設け、主体的な調査をできるようにする仕組みづくりに取り組むべきだ」と警鐘を鳴らした。(SANKEI EXPRESS

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