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カンボジアで開発プログラム 子供たちへの支援 地域に好循環

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カンボジアで開発プログラム 子供たちへの支援 地域に好循環

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 「この仕事をしていて、一番うれしいこと、一番つらいことは何ですか?」。この質問を何度受けてきただろうか。

 私の仕事は、日本に住む子供たちや若者に国際協力への理解を深めてもらうように働きかけることだ。学校での出張授業、子供向けイベントの開催、ボランティアの方との教材づくりなど。最近では修学旅行の一環としてワールド・ビジョンを訪問してくださる生徒の受け入れも増えている。ワールド・ビジョンのビジョンステートメント「すべての子供に豊かないのちを」が私の力の源だ。

 「この仕事をしていて、うれしいこと」は、子供たちへの支援がもたらす変化を見ること。

 3月にカンボジアを訪れ、チャイルド・スポンサーシップによる地域開発プログラムを視察した。このプログラムの最大の特徴は「子供を中心とした開発」を実施している点だ。支援が始まる前、大人は「子供は放っておくもの」などという考え方を持っていたという。

 支援では、子供たちに働きかけ、その権利を学ぶことで、「子供クラブ」などで生き生きと活動するようになった。その姿を見た大人にも意識変革が起こっている。1人遊びをしていた子供たちが、子供クラブで同年齢の子供たちと楽しそうに遊び、仲間になっていく。すると大人たちも住民組織として団結していったのだ。

 その結果、住民組織が基盤となって、子供たちの栄養状態を改善させるプログラムが成り立つようになった。子供に必要な栄養について学んだ親や地域住民は、ボランティアとして子供クラブでおかゆを作るようになったのだ。十分な調理設備などない。石を並べた釜戸で鍋を火にかけて、おかゆを作り出した。みんなの思いがいっぱい詰まったこのおかゆは、どんな栄養補助食品にも勝り、子供たちを心身ともに元気にする。

 また、農業トレーニングも実施している。「鶏を大きさごとに分けて育てると、小さい鶏が餌を食べられないことがないので、鶏はみんなすくすく成長するようになったんだ。それに鶏が病気になったらどうすればいいのか今はわかった」「卵は子供の栄養にもなる。市場で売ってお金を得られるようになったから、子供を学校に行かせられるようにもなったんだ」。支援は確実に実を結んでいる。この仕事をしていて、喜びを感じる瞬間だ。

 ≪たくさんの「うれしいこと」を力に≫

 このような支援の成果を日本で支援してくださっている方々に伝えたい。皆さまのご支援金は素晴らしいものに形を変えていることを伝えたい。

 特に、学校や教育機関を通じてチャイルド・スポンサーとして支援してくれている小学生や中学生の一人一人に、スポンサーになって良かったと思ってもらえるよう伝えていかなくてはならないと感じている。

 支援を必要とする途上国の子供たちがどのような問題を抱えているのか、日本の子供たちや若者が実感を持って理解を深めることができるように試行錯誤の日々だ。

 ウガンダで実際に水汲(く)みに使われているタンクで疑似体験をしたり、カンボジアで子供たちがしているような貝売りを体験したりして体感できる教材作りを心がける。

 同年齢のエチオピアの女の子が家族に残されたたった一つのパンを分け合う様子をDVDで紹介した授業では、子供たちは真剣な眼差(まなざ)しで映像に見入っていた。登場した女の子に思いをはせ、感想発表中に涙が溢(あふ)れてしまった児童もいた。こちらまで胸が熱くなる。もう一つの「仕事をしていて、うれしいこと」である。

 「どうしたらこういう仕事(国際協力)をする人になれますか?」と質問を受けることがある。一番うれしい質問だ。カンボジアの小学校でも6年生のクラスで4人の児童が「将来の夢はワールド・ビジョンのスタッフになること」と発表してくれた。教師や医師と同様の人気だった。同じ夢を抱く日本の小学6年生とカンボジアの6年生に同じ瞳の輝きを感じた。

 仕事をしていて「つらいこと」は、どんな仕事にもあるだろう。「つらいこと」よりもたくさんの「うれしいこと」が力をくれる。「すべての子供に豊かないのちを」。この仕事を選んだ思いは、今も変わらない。(写真・文:ワールド・ビジョン・ジャパン 松本瑶子/撮影:ワールド・ビジョン・ジャパン/SANKEI EXPRESS

 ■まつもと・ようこ 大学卒業後、3年間の企業勤務を経て、ワールド・ビジョン・ジャパンに入団。途上国の子供たちから日本のスポンサーに送られてくる手紙の翻訳業務の調整に従事。2008年から、日本の子供たちや若者に途上国の現状を伝えるグローバル教育を担当。

 ■ワールド・ビジョン・ジャパン キリスト教精神に基づいて開発援助、緊急人道支援、アドボカシー(市民社会や政府への働きかけ)を行う国際NGO。子供たちとその家族、そして彼らが暮らす地域社会とともに、貧困と不公正を克服する活動を行っている。www.worldvision.jp/

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