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実ったラブコール 海外展開を加速 サントリー社長にローソンの新浪氏 創業家以外で初

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実ったラブコール 海外展開を加速 サントリー社長にローソンの新浪氏 創業家以外で初

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サントリーの新社長に決まった新浪剛史(にいなみ・たけし)氏=2014年3月24日、東京都港区(原田史郎撮影)  サントリーホールディングス(HD)は6月24日、佐治信忠会(さじ・のぶただ)長兼社長(68)が代表権を持つ会長に退き、次期社長に10月1日付でローソンの新浪剛史(にいなみ・たけし)会長(55)が就任する人事を明らかにした。非上場企業のサントリーでは、1899年の創業以来、創業家以外の経営者がトップに就くのは初めて。グローバル展開の加速には外部人材の登用が必要と判断した。7月1日の臨時取締役会で正式に決定する予定だ。

 「わがサントリーにふさわしい人物だ。タイミングをずっと待っていた」

 6月24日朝、都内で取材に応じた佐治氏は、数年越しの“ラブコール”を笑顔で振り返った。ゴルフ仲間で慶大の後輩でもある新浪氏に対しては、数年前から「意中の人」だと伝えており、昨秋に社長就任を正式に要請したという。

 新浪氏も24日夕、「サントリーの企業文化の『やってみなはれ』はイノベーションの精神だ。世界中で新しい価値を作っていきたい」と意気込みを述べた。

 サントリーは5月に約1兆6000億円を投じて米蒸留酒大手ビームを買収、蒸留酒の世界シェア3位に躍り出た。2020年にはグループ売上高4兆円と13年比で倍増を目指している。海外展開と成長を優先して実現するためには、実績や経験が豊かな外部の経営者を招く必要があると判断した。

 三菱商事出身の新浪氏は、ローソンに三菱商事が出資した段階から経営再建を担い、02年に社長就任。海外出店の加速や農産物、医薬品の販売強化といった店舗展開の多角化で業績を急成長させた。佐治氏は「国際的な人脈も豊富で、グローバル展開を目指すサントリーにぴったりだ」と期待を寄せた。

 一方、佐治氏は社内で後継者を十分に育てられなかったことについて「私の責任かもしれない。大きな案件は全部自分で決めていたから」と述べ、創業一族ならではのリーダーシップが人材育成の妨げになったと打ち明けた。

 サントリーのグループ内では、創業者の鳥井信治郎氏のひ孫で、新浪氏より7歳若い鳥井信宏氏(48)が11年から飲料子会社サントリー食品インターナショナル社長を務める。佐治氏は「創業家で経営を続けられればベスト。(信宏氏が)うまく成長してほしい」と述べ、まだ経験が必要だと示唆した。新浪氏との二人三脚で“次のトップ”をどう育てていくかが、事業継承の新たな課題となる。(山沢義徳/SANKEI EXPRESS

 ≪広がる「プロ経営者」起用 日本定着に注目≫

 サントリーHDが次期社長にローソンの新浪剛史(にいなみ・たけし)会長を招く。新浪氏は三菱商事時代からローソンの経営再建に携わり、その後ローソンの社長・会長を12年間務めた、いわば「プロの経営者」。こうした外部からのトップ招聘(しょうへい)は欧米ではすでに一般的だが、日本でも定着するか注目される。

 今年に入り、プロ経営者起用の動きは加速している。4月には資生堂の社長に日本コカ・コーラで社長、会長を務めた魚谷雅彦氏(60)が就任。ファーストリテイリング元社長の玉塚元一氏(52)は5月に、ローソン最高執行責任者(COO)から社長に昇格した。ベネッセHDは今月(6月)21日付で、日本マクドナルドHDの原田泳幸(えいこう)会長(65)をトップに迎えた。

 プロ経営者として認められている人材は、外資系企業でのトップ経験者が多い。原田氏は米アップル、LIXIL(リクシル)グループの藤森義明社長は米ゼネラル・エレクトリック(GE)、カルビーの松本晃会長兼最高経営責任者(CEO)は製薬・ヘルスケア大手の米ジョンソン・エンド・ジョンソンで、いずれも日本法人のトップを経験している。

 りそなHDや日本航空などが経営再建のために実績のある経営者を迎えた例はあるが、最近は通常の人事でも外部からの起用が目立ってきた。サントリーHDの佐治信忠会長兼社長が新浪氏に白羽の矢を立てた理由に「国際性」を挙げたように、企業活動のグローバル化が背景にあるようだ。

 コンサルティング大手、プライスウォーターハウスクーパースの椎名茂社長は「世界の市場全般について詳しく、明確なビジョンを打ち出して海外の社員や取引先にも発信できる経営者が広く求められている。一方でそういう人材はまだ少なく、外部から招聘する例は少しずつ増えていくだろう」と話している。(SANKEI EXPRESS

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