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露恫喝、ISS飛行士「人質」ちらつかせ 米追加制裁への報復示唆

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露恫喝、ISS飛行士「人質」ちらつかせ 米追加制裁への報復示唆

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ソユーズ宇宙船でISS(国際宇宙ステーション)に到着した米露の3人の飛行士(手前)とともに会見をする船長の若田光一さん(後方左)らクルー=2014年3月28日(NASAテレビから)  ウクライナ情勢をめぐる米露の対立が、国際宇宙ステーション(ISS)の運営に重大な影響を及ぼす懸念が出てきた。米国の追加制裁発動に激怒したロシアは、ISSに滞在する米国人宇宙飛行士を“人質”とする報復措置をちらつかせ、恫喝(どうかつ)した。ISSへの飛行士の送迎はロシアの宇宙船ソユーズが一手に引き受けており、有人宇宙船を持たない米国への揺さぶりだ。日本への報復もほのめかしている。現在、ISSで船長を務める若田光一さん(50)や米国人飛行士が取り残されることはあり得ないとしても、対立が一段と激化すれば、ISSでの協力関係が決裂する可能性も否定できない。

 先端技術供給停止

 「制裁がロシアのロケット製造部門への打撃を狙ったものなら、ISSに滞在している米国の宇宙飛行士が危険にさらされることになるだろう」

 ロシアのドミトリー・ロゴージン副首相(50)は4月29日、自国に併合したウクライナ南部クリミアで、インタファクス通信にこう語った。フランス通信(AFP)などが伝えた。

 さらに副首相は「制裁というものは常にブーメランだ。投げた側に痛々しく命中する」と、報復を示唆した。

 ロシアを怒らせたのは、バラク・オバマ米大統領(52)が4月28日に発表した追加制裁だ。ウラジーミル・プーチン露大統領(61)の側近ら7人の在米資産の凍結などに加え、「ロシア国防産業の助けになり得る先端技術の輸出許可申請を拒否する」と明記した。

 この制裁に、セルゲイ・リャブコフ外務次官は(4月)29日、ロシアのネットメディアとのインタビューで、米国の追加制裁措置は「痛手だ」と率直に認めた上で、「ハイテク製品の供給停止は、1949年に西側諸国が構築した『鉄のカーテン』政策の再来だ」と、強く非難。ロシア政府関係者らへのビザ発給停止の制裁を決めた日本に対しても「報復措置なしでは済まさない」と明言した。

 ソユーズ頼み

 1998年に建設が始まったISSは米・露・日本・欧州・カナダの主要15カ国で共同運営。2011年の米スペースシャトルの退役後の人員輸送手段は、ソユーズしかなく、米国は1席当たり約7000万ドル(約72億円)の大金をロシアに支払っている。

 米航空宇宙局(NASA)は4月2日に、ロシアによるクリミア併合の制裁措置として、ロシア当局者との接触を禁じるなど宇宙開発分野での協力の停止を決めた。もっとも、ISSの運営は“米露同舟”の強い相互依存関係にあり、対象外でこれまで通りの協力が続いてきた。

 若田船長の帰還は…

 ISSには若田船長のほか、米国2人とロシア3人が滞在中。若田さんは5月14日にソユーズで帰還する予定だ。

 アメリカン大学の宇宙政策の専門家ハワード・マッカーディー氏はAFPに「米露それぞれに独自のトイレとエアコンがあるが、家庭内離婚の夫婦みたいなもの」と、ISS内のギクシャクした雰囲気を指摘。さらに「可能性は限りなく低いが、米露間で戦闘が起きれば、ISSの運営に重大な支障が及び、飛行士の帰還に不安が生じかねない」と警告する元宇宙飛行士もいる。

 米国はISSに飛行士を運ぶ民間企業主導の「宇宙タクシー事業」を急いでいるが、少なくとも17年まではソユーズに頼るしかないのが現状だ。(SANKEI EXPRESS

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