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再利用ロケット 4本脚帰還 米スペースX社、究極のコスト削減へ一歩

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再利用ロケット 4本脚帰還 米スペースX社、究極のコスト削減へ一歩

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米フロリダ州のスペースコースト  米宇宙ベンチャーのスペースX社は4月18日(日本時間19日)、国際宇宙ステーション(ISS)に物資を運ぶ無人のドラゴン宇宙船を、米フロリダ州のケープカナベラル空軍基地から打ち上げた。同時に、ドラゴン打ち上げに使ったファルコン9ロケットの1段目を大西洋に無事着水させる実験に成功した。実験はロケットを回収して再利用する構想に基づいており、その成功は、現在は使い捨てが常識の打ち上げロケットを何度も利用し、格段の低コストを実現するための大きな一歩といえる。宇宙旅行が海外旅行並みに身近となる日も、案外近いかもしれない。

 直立させ大破防ぐ

 スペースXは米航空宇宙局(NASA)と16億ドル(約1640億円)で計12回、ISSへ物資を運ぶ契約を結んでおり、ドラゴンのISSへの飛行は昨年3月に続いて4回目。今回は、すでにISSに運ばれている人間型ロボット「ロボノート」の脚の部品や、宇宙で野菜を育てるための実験装置、レーザーを利用した地上との通信機器など約2トンの荷物を届ける。

 ISSでは若田光一さん(50)が日本人初の船長として活躍中で、若田さんは20日、ロボットアームを操作して接近してきたドラゴンをつかまえ、ISSにドッキングさせる役目を担う見通しだ。

 今回、物資運搬ミッション以上にスペースXがこだわったのが、打ち上げロケットの回収・再利用に向けた軟着陸実験だ。スペースXは昨年(2013年)9月、ロケット着陸時の衝撃を和らげるため、落下時にエンジンを逆噴射させるテストを実施。実験は成功しかけたが、最後の段階で機体の回転によって生じた遠心力で燃料がうまく流れなくなり、ロケットは海面に激突して大破した。

 このため、エンジンの逆噴射に加えて、ロケット底部に装着した4本の脚(打ち上げ時には収容)を展開して直立した状態で着陸させるという方法を考案。今回の実験では、ドラゴンを切り離した後に逆噴射。4本の脚を広げ、ファルコン9ロケットの1段目は無事大西洋に着水したという。

 「実験は成功した」

 記者会見したスペースXの最高経営責任者(CEO)、イーロン・マスク氏(42)は「完璧ではないが、実験は成功した。目指すゴールへはまだ多くの困難が待ち受けるが、意義ある一歩を踏み出すことができた」と語った。さらに、今後は軟着陸の精度を高めるとともに、回収にも困難が伴うため、最終的にはロケットが打ち上げ発射場近くに戻るように改良を加えていく方針を明らかにした。

 海外旅行並みに!?

 マスク氏は以前、米メディアに対し、再利用型ファルコン9の構想について旅客機を例に挙げて説明している。ボーイング747型機であればわずか数千ドルで大西洋、太平洋を飛行できるのは機体が再利用できているためだとし、もし機体が再利用できない使い捨てであれば、500人乗せたとしても1人当たりの飛行料金は40万ドル(約4100万円)にもなると説いた。

 現在は使い捨てのロケットが将来、完全再利用することができるようになれば、1億ドル(約102億円)はかかる1回の打ち上げが、単純に燃料費だけと考えると数万から数十万ドル(数百万円~数千万円)に抑えることができるというのがマスク氏の持論だ。

 スペースXは来年には、ISSに向けて有人のドラゴン宇宙船を打ち上げる。その先には、宇宙旅行ビジネスが視野にあることは言うまでもない。(SANKEI EXPRESS

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