SankeiBiz for mobile

「橋下より遠藤」 浪速っ子、独り相撲に関心なし 

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの政治

「橋下より遠藤」 浪速っ子、独り相撲に関心なし 

更新

大阪市長選(届け出順)=2014年3月9日告示、3月23日投開票  【安倍政権考】

 浪速を舞台にした大相撲春場所は、番付を東前頭筆頭まで挙げてきた新進気鋭の遠藤(23)が初めて横綱、大関ら上位陣と総当たりするとあって大いに盛り上がっている。その傍ら、春場所初日の3月9日に告示された出直し大阪市長選(3月23日投開票)は、日本(にっぽん)維新の会共同代表の橋下(はしもと)徹前市長(44)と、政治団体代表のマック赤坂氏(65)ら3候補の対決となり、市民の関心はさっぱりらしい。

 「橋下より遠藤」

 「市長選をやってるムードすらないのとちゃうか。いまの浪速っ子の話題の中心は、橋下さんより遠藤やろ…」

 大阪市在住の知人はそう皮肉る。橋下氏による「独り相撲」は、街中に漂う力士の鬢(びん)つけ油の匂いにかき消されてしまっているようである。

 市内方々に設置されている候補者掲示板にポスターを張っているのは橋下氏だけ。そもそも市民の6割強が「必要がない選挙だ」と異を唱えていたうえ、投票箱の蓋を開ける前に「勝負あった」ような戦いである。“観客”がしらけるのも当然だろう。夕刊紙の日刊ゲンダイが「もはや関心事は投票率とマック赤坂の得票数だ」と書いていたが、そんな無意味な選挙に6億円余もの血税が費やされては、市民ならずともたまったものではない。

 橋下氏が辞職して出直し市長選を仕掛けたのは、持論の「大阪都構想」の議論を加速させる思惑からだ。しかし、これに反対する主要政党は「大義がない選挙」として対抗馬の擁立を見送った。

 橋下氏は再選後、市民の「信任」を盾に他党の抵抗を押し切り、都構想を前進させたい考えだが、反対・慎重派が多数を占める市議会の構成は変わらない。破れかぶれの「橋下流」に成算があるわけではないのだ。

 東西の糸、切れる寸前

 橋下氏が「政界の風雲児」ともてはやされたのも今は昔。出直し市長選はむしろ、自身の求心力をさらに低下させる“自爆”となる可能性がある。

 投票率は大阪市長選で過去最低だった1995年の28.45%さえクリアできるか妙だ。あまりに投票率が低くなったり、橋下氏への抗議の意思表示といえる白紙など無効票が大量に投じられたりしたら、当選しても「民意を得た」とは胸を張れまい。より攻勢に出るであろう他党との関係も一層こじれ、都構想は前進どころか頓挫する運命をたどるだけだろう。

 石原慎太郎共同代表(81)を中心とした旧太陽の党系と橋下氏が率いる大阪維新の会系が同居する日本維新の会は、とかく「東西対立」を露呈させてきた。原発輸出を認める原子力協定をめぐり、「反対」の党方針への造反を宣言した石原氏に対し、「西」の若手議員が「党を出ていけ」と怒鳴る一幕もあった。

 「橋下という男は本当に何を考えているのか分からない。東西をつないでいる糸がブツンと切れる寸前だ」。維新幹部はそう憤る。「先」の見えない出直し市長選に強引に打って出た橋下氏の政治手法への疑念や不満が、「東」の国会議員に広がっているのも事実だ。

 政治家としての千秋楽

 「橋下氏は早晩原点回帰し、もともとの党是だった『地方分権』と『脱原発』を推し進め、毛色が違う旧太陽系と手を切るだろう」と、永田町関係者は指摘する。出直し大阪市長選後、自民党へのシンパシーを隠さない「東」と、結いの党との連携を含めた野党再編を模索する「西」がいよいよ分裂に向かう事態となるのは否定できないのだ。橋下氏自身は2月1日の党大会で「維新は分裂しません」と言い切ったが、党の“お祭り”の舞台に「分裂」なる言葉を持ち出すこと自体、異例かつ奇妙だった。

 仮に分裂となれば橋下氏にとっては文字通り「出直し」となるが、狂瀾(きょうらん)を既倒に廻(めぐ)らすだけの政治力や影響力が残されているかどうか…。浪速の「独り相撲」が事実上の政治家としての千秋楽にならないとは断言できまい。(高木桂一/SANKEI EXPRESS

ランキング