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オスカー像 リベラルに針路 アカデミー賞「それでも夜は明ける」に作品賞

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オスカー像 リベラルに針路 アカデミー賞「それでも夜は明ける」に作品賞

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 米映画界最高の栄誉とされる第86回米アカデミー賞の発表・授賞式が3月2日午後(日本時間3日午前)、米ハリウッドで行われた。作品賞は米の黒人奴隷制度が題材の「それでも夜は明ける」(スティーブ・マックイーン監督)、監督賞は宇宙SF「ゼロ・グラビティ」のアルフォンソ・キュアロン監督(52)に輝いたが、マックイーン監督(44)は黒人で、キュアロン監督もヒスパニック(中南米)系と、非白人が主要賞に居並んだ。マイノリティーを重視し、人種や価値観の多様化に踏み出したアカデミー賞の姿勢を世界に知らしめるかつてないメッセージとなった。

 奴隷制耐えた人々に

 「すべての人は危機を乗り越え生き抜くに値する。奴隷制度に耐えたすべての人々にこの賞をささげます」

 英国生まれの黒人、マックイーン監督は壇上で黒人監督として初めて作品賞を受賞した喜びをこう語り、最多7冠に輝いた「ゼロ・グラビティ」のメキシコ人監督キュアロンは主演女優サンドラ・ブロック(49)に「君はこの作品の心であり魂であり、作品そのものだ」と感謝の意を述べた。

 作品賞や助演女優賞、脚色賞の3部門を獲得した「それでも夜は明ける」は、突然、奴隷にされた黒人男性が約11年9カ月後に解放され、家族と再会を果たすという実話に基づく感動ドラマだが、米国の恥部といえる奴隷制度が題材の作品がアカデミー賞の主要部門に絡んだ例はほとんどない。ヒスパニック系の監督賞受賞もアカデミー賞初の快挙だ。

 「少数派」に投票権

 しかし、ハリウッドではこうした結果を予想する声が当初から少なくなかった。

 今年度のアカデミー賞は、ハリウッドの映画業界人で組織する映画芸術科学アカデミー(AMPAS)の会員6028人による投票で各賞が決まったが、昨年(2013年)12月21日付米紙ロサンゼルス・タイムズ(電子版)は、AMPASが2012年と13年に選んだ投票権を持つ新会員計432人を選ぶ際、意図的に女性やマイノリティー(少数派)の人種を増やしていたと報じた。

 実際、13年に選ばれた276人の中には、ヒスパニック系の米女性歌手ジェニファー・ロペス(44)や、12年3月にアジア系米国人で初めてハリウッドの大手映画会社のトップに就任したワーナー・ブラザーズ・エンターテインメントの日系CEO、ケビン・ツジハラ氏(49)らがいた。

 会員のほとんどが60歳以上の白人男性というAMPASで、12年7月、黒人初のAMPAS会長で、30年ぶりの女性会長でもあるシェリル・ブーン・アイザックス氏は、会員の人種や性別などの多様性の向上を「普遍的な目標」と明言。23年には13年に7.2%だった非白人会員の比率が11.4%、女性会員比率も23.9%から27.8%に増えるとみている。

 この2作の他にも、1980年代にエイズウイルス(HIV)に感染した実在の男性を描く「ダラス・バイヤーズクラブ」が2冠と好成績を挙げるなど、今回のアカデミー賞はあらゆる意味での「マイノリティー重視」「多様性の向上」に挑むAMPASの意気込みが色濃く反映された。リベラルと保守による価値観の分断が深まる米国で、アカデミー賞がリベラルへのアクセルを一段と強く踏み込んだ結果ともなった。(SANKEI EXPRESS

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