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世界観作らず、固定概念も作らない 蓮沼執太 15人オーケストラで新譜

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世界観作らず、固定概念も作らない 蓮沼執太 15人オーケストラで新譜

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音楽家、作曲家、蓮沼執太(しゅうた)さん(後藤武浩さん撮影、提供写真)  “蓮沼執太”というジャンルが成立するといっていいほど、彼は独自のスタンスで活躍中だ。環境学を専攻した大学での卒業制作でフィールドレコーディングを生かしたアルバムを作り、アメリカのレーベルからリリース。これまで事務所に所属せずに一個人で活動し、ソロ作品の他に、演劇、ファッション、美術、建築、映画などと多岐にわたるコラボレーションを展開してきた。今回は15人編成の蓮沼執太フィルで、初アルバム「時が奏でる Time plays - and so do we.」を発表した。

 やりたいことのためにミュージシャンに声をかけ始めたら、この人数になったという。スチールパンやマリンバなど、気持ちを明るくする鮮やかな音色が優美なメロディーに踊る。アルバムはライブで演奏してきた曲中心で、全員がそろった3日間でほぼレコーディングを終えた。

 「僕の曲をライブに向けて翻訳するのが初期のフィルの姿で、このアルバムの最初のコンセプトは、『いつの時代も聴かれる音楽』。ライブ演奏で表現するので、『世界観を作らず、固定概念も作らない』。そうすることで誰もがアクセスしやすくすることは意識しました」

 先入観なしで聴いて

 ソロ作品には電子音楽家としてのイメージが強いが、ここでは豊かな音色の合奏に加え、蓮沼と木下美紗都のツインボーカルや環ROYのラップがゆるやかに合流する。情景と心象を時の流れに乗せながら描いた歌詞も、自然と心に入り込んでいく。

 「歌詞では言葉の持っている意味の質感と、声に出した時の音の質感は大切にしています。そして、このアルバムは先入観なしに聴いてほしいですね。社会って、先入観を植え付けるでしょ?」

 一方、コラボでは音楽的キュレーションを感じさせる。

 「同世代との共同作業が多いですね。表現や社会に対する問題意識とか似ているんじゃないかな。たとえば既存に行われたダンス表現と、今を生きる人たちのダンス表現と、これからのダンス表現を考える問題意識と、僕がやっている音楽の考え方にどこかしら共通する部分があるから、僕にオファーがくるのでは」

 そう話す蓮沼執太の活動は、価値観や意識を覚醒させてくれる。5月からはNYで生活するという。(音楽ジャーナリスト 伊藤なつみ/SANKEI EXPRESS

 ■はすぬま・しゅうた 1983年、東京生まれの音楽家、作曲家。2010年に蓮沼執太フィルを結成し、ライブハウスやコンサートホールをはじめ、東京都現代美術館などのアートスペースでも演奏。フィルにはYMOのサポートを務める権藤知彦(ユーフォニアム)、相対性理論やトクマルシューゴでも演奏するイトケン(ドラム、シンセサイザー)、舞台音楽の名手としても知られる大谷能生(サックス)をはじめ、日本の最前線で活躍するミュージシャンが多数参加。

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