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今を生きるためのラブソング RADWIMPS
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4人組ロックバンド「RADWIMPS」。左から武田祐介(B&Cho)、山口智史(D&Cho)、野田洋次郎(Vo&G)、桑原彰(G&Cho、提供写真) 「僕は歌詞を書き終わった時に、書き始める前と違う人間になりたい。書き終えた時に違うことを知っていたいし、気づいていたい」(野田)
RADWIMPSの野田洋次郎が書く歌詞には、名言として残したいほど響く言葉が並ぶ。「自分が何を考え、どこを向き、何を大事にしているかを知りたいから」と、確認しながら言葉をつなげているからだろう。
10月に発売したWシングル「五月の蠅/ラストバージン」のうちの前者は、レイプや通り魔といった言葉が意表を突く衝撃のナンバー。「許さない、って言い続けたくて、それで書き終わろうと思ったものの、途中からただただ救われたくなって救いたくなって。ラブソングにするためには最後の2行を入れることが自然だった」と、2時間で書き上げた。
「僕は何かを言う時に真逆の極論を用いて、もう片方の極を説明しがち。聴く人によって受け止め方が違うと思うけど、この歌を言葉で説明するのはきっと違う」(野田)
この曲をシングルとして出したことが意思表明となり、これまでのたがが一気に外れて感情をむき出しにしたアルバムが完成した。
「震災が人間にした、あのエネルギーの振り切り方がとんでもなくて、その後に日本に住む人たちに何かを投げ掛けようとした時、今まで『50言ってやっと5が伝わるかな』というくらいだったけど、『さらに100、1000言わなきゃ』と思うようになった」(野田)
次々と曲が生まれ、純度の高いまますぐにメンバーに渡された。「歌詞が全部最初からあったので、(どう弾くか考えるのに)たどり着くのが早かった」(桑原)、「常に2、3曲くらい手を付けていた状態が続き、アイデアも次々と浮かんで、みんな楽しんでやれている感じがあった」(山口)、「全員が(PCソフトの)プロツールスを使うことでシミュレーションしやすくなって、全体のアレンジを考えやすくなった」(武田)と話すように、歌詞の世界観に演奏が丁寧にも衝動的にも絡み合い、充実した音楽が心身に飛び込んでくる。
「曲作りは、正常に生きるという活動の一環かもしれない。“今”ほど遠い場所はないし、その場所なり時間なりを、何千キロも離れたところや数センチ手前から見たり、まだ見ぬ自分の子供と(歌の中で)会話したりして、結局“今”を知るために、“今”のことばかり歌っている気がする」(野田)
今を生きるための強烈で極上な愛や、次の世代に伝えたい思いに満ちあふれている。聴き終わった時に、聴く前と違う人間に成長できる傑作である。(音楽ジャーナリスト 伊藤なつみ/SANKEI EXPRESS)