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脚本よりキャストありきでスタート 映画「旅人は夢を奏でる」 ミカ・カウリスマキ監督インタビュー

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脚本よりキャストありきでスタート 映画「旅人は夢を奏でる」 ミカ・カウリスマキ監督インタビュー

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「体調を崩していた(ベサ=マッティ)ロイリは撮影現場に車椅子で通ってくれた。映画ではそんなこと微塵も感じさせない。プロの役者ですよ」と語るミカ・カウリスマキ監督=東京都中央区(高橋天地撮影)  映画監督の弟、アキ・カウリスマキ(56)とともに、1980年代からフィンランドの映画業界を牽引してきたミカ・カウリスマキ監督(58)がこのほど、自身で脚本、製作も手がけた新作ロードムービー「旅人は夢を奏でる」のプロモーションで10年ぶりに来日した。

 シリアスにしたくなかった

 反目し合う父と息子が再び心を通わせるまでの軌跡を描いた本作は、2012年8月にフィンランドで公開されるや、興行収入ランキングで初登場1位を獲得。その後も「メリダとおそろしの森」「マダガスカル3」「テッド」といった並み居る人気作品を押しのけ、快進撃を続けた。ミカ監督は「父子関係のあり方という主題は、思春期の若者から老人まで、世界の人々がアクセスしやすいものでしょう。でも、僕は気がめいるほどシリアスな物語にはしたくなかったから、コメディータッチにしたんだ。それがヒットの理由かな」と分析してみせた。

 ティモ(サムリ・エデルマン)はピアニストとして成功を収めたが、音楽に人生の全てをささげるストイックすぎる生活についていけなくなった妻は、幼い娘を連れて家を出てしまった。そんなティモの前に、3歳の時に別れたきり、35年間も音信不通だった父、レオ(ベサ=マッティ・ロイリ)が突然、姿をみせる。レオの口車に乗せられる形で半ば強引に始まった北へと向かう2人旅は、ティモにとって自分のルーツを探る旅となったが…。

 フィンランドでは誰もが知る人気俳優、エデルマンとロイリは、ミュージシャンとしての顔も持ち、作中で披露してみせた名曲「枯葉」の即興セッションは息もぴったり。ミカ監督は「2人はフィンランドを代表する人気者なんだけど、実は映画では一度も共演したことがなかったんだ。僕が映画を作ることを話したら、2人とも『ぜひ出演させてほしい』という。だから、この作品は脚本よりも先にまずはキャストありきでスタートしたんだ」と、キャスティングの舞台裏を明かした。

 この筋書きしかなかった

 物語は、ミカ監督の自伝ではないという。「僕は俳優たちに『キャラクター作りに生かしたいから』と、自分の父親との思い出を教えてもらい、自分の体験と混ぜて、脚本を執筆したんだ。ロイリは『俺は何度も離婚したから、一体、自分の子供がどの元妻の子供か分からないんだよ』と、半分以上本気で話してくれたよ」

 さて、ティモとレオの関係がある方向へと再構築される“感動”のラストについては、「別の筋書きを考えてほしかった」と、大勢のミカファンからため息まじりの感想が寄せられたそうだ。ミカ監督はそんなファンの声に理解を示しつつも、「死期が近いと悟った父親がわざわざ息子に会いに来た理由を考えれば、ラストの筋書きしかないですよね」と語り、苦笑を浮かべた。1月11日から全国順次公開。(高橋天地(たかくに)、写真も/SANKEI EXPRESS

 ■Mika Kaurismaki 1955年9月21日、フィンランド生まれ。映画監督・脚本家・映画プロデューサー。弟は映画監督のアキ・カウリスマキ。主な監督作は、90年「アマゾン」、96年「コンディション・レッド/禁断のプリズン」、98年「GO!GO!L.A.」、2002年「モロ・ノ・ブラジル」、11年「ファーザーズ・トラップ 禁断の家族」など。

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