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ダークヒーロー 現代でも通用する魅力 舞台「寿三升景清」 市川海老蔵さんインタビュー
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「前から父・團十郎の演出で上演しようとしていた」と話す、歌舞伎俳優の市川海老蔵さん(飯塚友子撮影) 「力も才能も持っていながら、平家方についたがゆえ報われず、滅んでいく。そんなダークヒーロー像は、現代に置き換えても通用する魅力があるのではないか」
歌舞伎俳優、市川海老蔵(36)が新年演じるのは、平家滅亡後も源氏打倒を狙い続け、源頼朝暗殺を37回も企てた悪七兵衛(あくしちびょうえ)景清。この“反逆の英雄”は、海老蔵の祖先・七代目市川團十郎が家の芸として制定した「歌舞伎十八番」にも4演目で登場するが今回、それらを新構成する形で「寿三升景清(ことほいでみますかげきよ)」(川崎哲男・松岡亮脚本、藤間勘十郎振付・演出)を上演する。
舞台で描かれるのは景清の波乱の生涯だ。景清(海老蔵)に、中国の伝説的な軍神・関羽の魂が乗り移って超人的パワーを獲得(歌舞伎十八番では「関羽」)。ひげそりにかこつけ、三保谷四郎(市川左團次)から命を狙われても、景清は不死身だ(「鎌髭」)。平家滅亡後も生き残って土牢に閉じ込められ、源氏方の秩父庄司重忠(中村獅童)が景清の妻・阿古屋(中村芝雀)らを人質に駆け引きを図るが、それも切り抜けて牢破り(「景清」)。そして源氏打倒の夢破れた景清が、悟りの境地に至るさまは、舞踊劇で表現される(「解脱」)。
「本来、スーパースターだったはずの景清は死ぬ間際、走馬燈のように人生を振り返ったはず。報われなかった景清の夢を、舞台ですべて実現させ、それらを乗り越えて天に召される姿を表現したい」
過去の新橋演舞場(東京・銀座)新春公演では、空中浮揚のイリュージョンなど、新たな趣向も取り入れていたが、今回も「消防法と予算との闘い」で、景清の天下無双ぶりを見せたいという。
舞台構想は、今年2月に急逝した父・團十郎にも伝え、團十郎演出で準備を進めていた。今回、それはかなわなくなったが、海老蔵は近年、歌舞伎十八番の継承と復活に、特別な使命感を持って取り組んでいる。今回の舞台に組み込まれる「鎌髭」も今年5月、京都南座で二百数十年ぶりに復活したばかりだ。
今年は偉大な父の死という大きな試練に立ち向かいながら、4月に新開場した歌舞伎座(東京・銀座)の?葺落(こけらおとし)興行に出演、宮本亜門演出で新作歌舞伎も企画。自主企画公演「古典への誘い」で地方巡業…と例年にも増して奮闘が目立った1年だった。
「僕の使命は全うします」。江戸歌舞伎の象徴・市川團十郎家を引き継ぐ覚悟をそう語った。(飯塚友子、写真も/SANKEI EXPRESS)
来年(2014年)1月2~26日、新橋演舞場(東京) チケットホン松竹(電)0570・000・489