SankeiBiz for mobile

史上初 「洛中洛外図」勢ぞろい 東京国立博物館で特別展

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSのエンタメ

史上初 「洛中洛外図」勢ぞろい 東京国立博物館で特別展

更新

 400年前の京都にタイムスリップ-。洛中洛外図と京都の障壁画を集めた特別展が東京・上野の東京国立博物館で開かれている。信長や秀吉、家康が活躍した室町時代末期から江戸時代初期の京都の町衆の暮らしぶりや風俗を、市中と郊外の名所・旧跡とともにつぶさに描いた屏風絵「洛中洛外図」をはじめ、京都御所や二条城など京都を代表する名所の室内を飾る障壁画を見ることができる。それぞれがスケールの大きな見応えのある作品ばかりで、時空を超えて京都を体感できる。

 「洛」とは中国の都市、洛陽をモデルに建設された京都を表す言葉。時の権力者がさまざまな絵師に描かせた洛中洛外図は、国宝と重文合わせて7件が存在する。7件は、「舟木本」「上杉本」などとコレクター名を冠した名称で区別される。東京国立博物館の松嶋雅人特別展室長(47)によると、これら7件が一挙に展示されるのは史上初という。

 東京国立博物館の所蔵で、滋賀県の医師、舟木榮氏が収集した重要文化財の「舟木本」は、浮世絵の祖といわれた絵師、岩佐又兵衛の筆による江戸時代の作品。左右2隻の屏風を並べると約7メートルの画面幅に、南から見た京都の景観を東から西へ展開させている。

 右の屏風の中央左寄りには五条大橋と、桜の木や日傘を手に踊りながら橋を渡る人々が描かれる。橋の左に目を移すと人形浄瑠璃や歌舞伎などの芝居小屋がひしめき、四条河原の喧噪(けんそう)が今にも聞こえてきそうだ。清水寺や八坂神社などの名所に加え、四季折々の風景や祇園祭なども描かれ、登場人物は2700人に上る。「舟木本」は他の本に比べて人物が大きく描かれているのが特徴。全体に金色の雲を配して空間をつなぎ距離を縮める工夫がされ、広い空間を一目で見られるようになっている。

 また、国宝「上杉本」(米沢市上杉博物館蔵)は、安土桃山時代の絵師、狩野永徳の作品で、織田信長が上杉謙信に贈ったといわれる。全体にちりばめられた金雲からとがった建物の屋根をのぞかせる表現が特徴で、貴族や武家の邸宅や寺院などランドマークが数多く描かれ、細密な筆致に目を奪われる作品だ。

 ≪「信長や謙信も見ていた京都」感じて≫

 洛中洛外図の中にも描かれた名所、二条城や龍安寺の室内を飾る障壁画も見物だ。二条城は徳川家康が築城し、三代将軍家光の時に増築された。十五代将軍慶喜が大政奉還の発表を行った二の丸御殿の障壁画は、当時画壇の頂点を極めた狩野探幽を棟梁とした狩野一門が描いた。「松鷹図」など大広間四の間の15面、黒書院の一の間、二の間などを飾った69面全てが勢ぞろい。現在の二条城では複製が展示されているが、ここでは全て本物。東京国立博物館の高い天井を利用して、障壁画を二段に再現するなど珍しい展示法が臨場感を盛り上げる。

 龍安寺方丈の石庭を見渡す室内にはかつて90面の障壁画があったが、明治の廃仏毀釈の時代に売却され、その後散逸。メトロポリタン美術館とシアトル美術館が所蔵する12面が初の里帰りを果たした。また、2010年にオークションにかけられ、115年ぶりに龍安寺が買い戻した6面も公開されている。

 東京国立博物館の小林牧広報室長(51)は「一枚一枚じっくり見るのもいいが、ここにボーッとたたずんで空間を感じてもらいたい」という。京都からわざわざこの特別展を見に来たという旅館勤務の青柳友香さん(28)は「信長や謙信も楽しみながら見ていた姿が目に浮かぶ。洛中洛外図を前にしたら誰でも同じように楽しめるのが素晴らしい。京都から来た甲斐がありました」と興奮気味に話していた。

 実際の京都はこれから1年で最も美しく彩られる紅葉の季節を迎える。そんな京都でも決して見ることのできない京都を堪能してみてはいかがだろうか。(EX編集部/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 ■「特別展京都ー洛中洛外図と障壁画の美」 東京都台東区上野公園の東京国立博物館平成館で12月1日(日)まで。午前9時30分~午後5時。金曜と11月2日(土)・3日(日)は午後8時まで、11月4日(月)は午後6時まで(入館は閉館の30分前まで)。休館日は、月曜と11月5日(火)。観覧料は一般1500円、大学生1200円、高校生900円、中学生以下無料。問い合わせはハローダイヤル03・5777・8600

ランキング