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メキシコ 世界遺産の街オアハカ 陽気な「死者の日」 華やかに
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メキシコ市から飛行機で約1時間、歴史的街並みが世界遺産に登録されているオアハカに到着した。目的はメキシコの祝日「死者の日」(11月1、2日)をカメラに収めることだった。
死者の日とは、日本でいえば「お盆」のようなもの。ただ、その風景やメンタリティーはかなり異なる。メキシコでは、11月1日は子供の、2日は大人の魂が戻る日とされ、酒や食べ物を持ち寄って墓に家族、親戚、友人たちが集まり、故人の思い出話に浸りながら陽気に楽しく過ごす。メキシコ全土の中でも、特に華やかな音楽イベントやパレードが行われることで有名なのがオアハカであり、毎年、多くの観光客を集めている。
標高1550メートルの高地の空気の薄さを感じながら、飛行場から中心街へと足を延ばすと、赤と黄色のマリーゴールドの花が、山の匂いを伝え、街を鮮やかに色づけていた。レストランやホテルなど各所にガイコツの人形たちが踊っているかのように飾り付けられ、教会にはガイコツの形をしたパンやチョコレートなどが飾られた「オフレンダ」と呼ばれる祭壇が設けられていた。
仮装パレード中の少女にカメラを向けると、少女と3人の大人たちが列を抜け出し、わざわざポーズを取ってくれた。聞けば少女は小学生で、3人は先生たちだという。その温かい「おもてなし」の心が嬉しかった。
≪飲んで歌って 「生」を再確認≫
オアハカの中心地からほど近い墓地「パンテオン・デ・サン・マルティン・メヒカパン」では、音楽が鳴り響いていた。その音に誘われて足を運ぶと、墓の前で飲めや歌えやと陽気にはしゃぐ一家の姿があった。
ルイス・カレーラさん一家で、居合わせた音楽隊は4曲100ペソ(約780円)でリクエストに応え、各墓を回っている最中だった。カレーラさんは「ハポン(スペイン語で日本)、ハポン」と連呼し、ビールを飲め飲めと身振りで勧めてくれた。
ナチビダッド・オサルドさんは息子のラウルさんといっしょに叔母さんの墓をマリーゴールドで飾り、カントリーミュージック4曲を音楽隊に頼んだ。オサルドさんは「どの曲も(叔母が)大好きだったんです」と故人を偲(しの)んだ。
にぎやかな雰囲気の中で、静かに墓にたたずむ人もいた。80歳のフランシスコ・ロペスさんは息子の墓石に腰をかけ、昔話を聞かせてくれた。
夜は無数のロウソクの光が墓地を幻想的にさせ、周辺にはたくさんの屋台が軒を連ねた。どの店も地元の人々や観光客でにぎわい、雰囲気は「死者の日」という言葉が持つイメージとはかけ離れたものだった。
メキシコの人々はこの死者の日を家族と楽しく過ごし、故人のことを想い、語り合うことで故人に自分自身の成長を示し、時間を共有することによって「生」を再確認しているのではないだろうか。そんな気がした有意義な2日間の経験だった。(写真・文:写真家 今井竜也(たつや)/SANKEI EXPRESS)