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密着2年 カリスマの本質追う ドキュメンタリー映画「アイ・ウェイウェイは謝らない」 アリソン・クレイマン監督インタビュー

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密着2年 カリスマの本質追う ドキュメンタリー映画「アイ・ウェイウェイは謝らない」 アリソン・クレイマン監督インタビュー

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「ビザが取れたのでもう1度中国へ行ってアイ・ウェイウェイを追いかけたい」と語るアリソン・クレイマン監督=2013年10月16日、東京都新宿区(高橋天地撮影)  北京五輪のメーンスタジアム「鳥の巣」を設計したのが、中国を代表する現代芸術家、アイ・ウェイウェイ(艾未未、56)だ。キュレーター、評論家としても精力的に活動し、その守備範囲は広い。舌鋒鋭い体制批判論者として知られるアイは、ツイッターやブログを駆使して社会の矛盾を世界へ発信し続けており、彼の日常生活は一部始終、当局から監視されている。

 2年間にわたりアイに密着し、破天荒にすら見える彼の過激な人生の本質に肉薄したのが、長編ドキュメンタリー映画「アイ・ウェイウェイは謝らない」。中国を拠点に報道番組の制作を続けてきた米国のアリソン・クレイマン(29)がこのジャンルで初めて監督に挑んだ。「彼はとても変わった人に見えたけど、政治について語る姿にはカリスマ性がある。すぐにとりこになったわ」。クレイマンは2008年、中国で出会った際の第一印象を振り返った。

 釈放後の言動見どころ

 作中では、アイと当局の激しい対立を軸に、言論の自由がない中国の現状が盛りだくさんのエピソードとともに映し出されている。

 具体的には、アイは08年5月の四川大地震で死亡した児童約5000人について、独自に正確な死者数や原因の把握に努め、当局と衝突。09年8月には警官から暴行を受け、脳外科手術を余儀なくされ、警官を提訴。11年4月には当局に拘束され、約3カ月間も行方不明となった…。

 クレイマンが一番の見どころに挙げたのは「釈放後のアイの言動」だ。かつてあれほど冗舌だったアイが一転、頬かぶりを決め込み、塀の向こうで何があったのかを語ろうとしないのだ。身辺の安全に関する取引やデリケートな事情があるにせよ、「彼の態度は『当局はここまでやるんだよ』という感じ方を表現したものでしょう」。クレイマンはアイの変化をこう読み取った。現在、アイとは携帯電話ですぐにでも話せる状態が保たれているそうだが、海外渡航は禁じられてしまった。

 「中国の研究者や取材者に対して『中国を予測するな』というジョークめいた忠告があるのよ」。クレイマンはこう前置きしたうえで、それでも今後、表現の自由を縛る堅牢な体制に変化が起きかねないとの思いも吐露した。「アイ・ウェイウェイもそうだったけれど、多くの指導者層の子弟、学生たちが海外へ留学しています。一度自由を享受してしまうと、それ以下の状況には耐えられなくなると思うの」。11月30日から全国順次公開。(高橋天地(たかくに)、写真も/SANKEI EXPRESS

 ■Alison Klayman 1984年、米フィラデルフィア生まれ。ジャーナリスト、ドキュメンタリー映画作家。2006年、ブラウン大で歴史学の文学士号を取得し卒業。06~10年まで中国で暮らし、AP通信などのラジオ、テレビ番組特集を制作。本作は12年のサンダンス映画祭で審査員特別賞と挑戦の精神賞を受賞した。北京語とヘブライ語を話す。

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