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ヒラリー番組「政治に負けた」 米CNN、NBC 共和党反発で制作断念

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ヒラリー番組「政治に負けた」 米CNN、NBC 共和党反発で制作断念

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 米CNNテレビとNBCテレビが個別に進めていたヒラリー・クリントン前米国務長官(65)を描く番組の制作が同時に中止となり、米国内に波紋が広がっている。2016年次期米大統領選での民主党有力候補とされる彼女を大々的に取り上げるとあって、宿敵・共和党の全国委員会(RNC)が、制作を中止しなければ両テレビ局主催の候補者討論会への参加拒否を表明していたうえ、当の民主党の議員たちも制作に全く協力しなかったため、中止を余儀なくされたのだ。制作側は「政治に負けた」と悔しがっている。

 民主党も非協力的

 CNNとNBCはともに9月30日、制作断念を発表したが、先に発表したのはCNNだった。

 CNNの番組制作を進めていたのは、2010年にアカデミー賞の最優秀ドキュメンタリー賞を受賞したベテラン、チャールズ・ファーガソン監督(58)。フランス通信(AFP)によると、大統領夫人から国務長官に上り詰めたヒラリー氏に関する「野心的で論争を巻き起こす、非常に視覚的な」ドキュメンタリーで、劇場公開も予定していたという。

 ところが制作は全く進まなかった。理由は簡単。共和党が「彼女の宣伝番組だ」と猛反発したうえ、当の民主党も非協力的な態度を取ったからだ。

 「100人以上の関係者に取材を依頼したが、顔出しのインタビューを承諾したのは2人だけだった。共和党も民主党もこの番組が作られることを望んではいなかった」

 ファーガソン監督はAFPにこう明かし、「自分が誇れない映画を作ることはできないという結論に至った。CNNから圧力はなく、むしろ逆だった」と無念の思いを吐露した。

 「候補者討論会参加しない」

 CNNの発表から数時間後、NBCから発表があった。NBCの番組は約4時間のミニシリーズで、今年7月に制作が発表されていた。

 ヒラリー氏役はハリウッド女優のダイアン・レインさん(48)、脚本は09年のアカデミー賞で脚本賞の候補となった「フローズン・リバー」のコートニー・ハント監督が担当。大統領夫人、母親、政治家と多様な顔を持つ彼女の歩みを描き、15年春の放送を予定していた。

 ところが両テレビ局の計画にRNCが激怒し、8月16日、両社に対し、番組を中止しなければ候補者討論会には参加しないと通告。これに対しNBCの報道部門はRNCではなく、同じNBC社内の番組制作部門に猛烈なクレームをつけた。共和党からの圧力はなかったが、結局、NBC側が自主規制する形で計画が消えたという。

 NBCは、2003年に保守派の批判で放送中止に追い込まれた米CBSテレビのロナルド・レーガン元米大統領(1911~2004年)のミニシリーズの二の舞いを恐れ、制作中止を決めたとの見方も出ている。

 いずれにせよ、両テレビ局の番組制作中止は、政治に潰されたことは間違いない。ファーガソン監督は米ネット新聞、ハフィントンポストへの寄稿でこう怒りをぶちまけた。

 「これはクリントン家の勝利であり、いまや集金マシンと化した(民主・共和)両党の勝利でもある。メディアと米国民にとっての勝利とは言えない」(SANKEI EXPRESS

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