SankeiBiz for mobile

発想生む「協働スペース」広がる

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSのトレンド

発想生む「協働スペース」広がる

更新

 会員制で共同利用するオフィス「コワーキング(協働)スペース」が各地で増え、利用者が仕事の幅を広げている。得意な技能を持ち寄る、地方の企業が東京での活動拠点にする、人脈を広げる-と利用の仕方はさまざま。出会いが新しい発想を生み出している。

 全国300カ所、出会いの場に

 流行の発信地、東京・渋谷。中心部から5分ほど歩くと、コワーキングスペース「PoRTaL(ポータル)」がある。ゆったりした空間には日の光が注ぎ、席は自由に選べる。

 「いろいろな職業の人と自然に友達になれて、視野が広がった」。インテリアデザイナーの鈴木文貴さん(35)は、会社を退職して独立したのを機に昨年7月、会員になった。

 親しくなった漫画家が単行本で鈴木さんの作品を紹介してくれた。鈴木さんは自分の仕事を紹介する画集を作ることを思いついた。川のせせらぎなど、自然の中にある音を研究する人とも知り合った。「将来は音や匂いを生かした空間を作りたい」と考えている。

 働く環境を研究、開発するコクヨRDIセンターによると、コワーキングスペースは数年前から大都市中心に増え、全国に現在約300カ所。斎藤敦子主幹研究員は「東日本大震災以降、場所や考えを共有する空気が社会に広まっている気がする。社員に利用させ商品開発に生かす企業も増えるのでは」とみている。

 昨年4月に開業した複合商業施設「渋谷ヒカリエ」にある「MOV(モブ)」には、24時間使える固定席もある。

 得意分野を持ち寄って

 利用者のIT系3社の社員13人が7月「スクウェアガーデン」というチームを結成。ホームページのデザインやパソコンに映し出す技術、企業への宣伝など、得意分野で協力して仕事を受注する。

 チーム代表の武聡志さん(34)は「あえて一つの会社にならないことで、心地よい距離感がある。ここは、さまざまな目的や方向性を持つ人が集まる駅のような場所」と語る。

 大分県宇佐市でハーブのお茶や調味料、化粧品を製造、販売する「ファインド・ニューズ」(社員12人)の社長、高野済さん(51)は昨年6月以降、会議室の利用などを含め月に約30万円で固定席を2つ確保している。

 モブで培った人脈を生かし、通常1年以上かかる商品開発を4カ月で達成、東京で働く社員を3人採用した。渋谷区内で30万円出せば3倍広い事務所も借りられるが「生きた情報を持つ人と出会えるのがいい。場の力がある」と評価する。

 一方、共同利用のため、固定席には限りがある。高野さんは東京での採用増を検討中で「手狭になって離れても、ここで結び付いた人や企業にファンドが投資するなど、新しい仕組みがほしい」と期待している。(SANKEI EXPRESS

ランキング