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イラン核濃縮制限 制裁を一部緩和
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イランの核関連施設=2013年11月24日現在 スイス・ジュネーブで開かれていたイラン核問題をめぐる協議で、国連安全保障理事会5常任理事国にドイツを加えた6カ国とイランは11月24日未明、核問題の包括的解決に向けた「第1段階」の措置で合意。イランは軍事転用が懸念されるウランの濃縮活動などを制限する一方、欧米はイランへの経済制裁の一部を緩和する。2006年から続く双方の核協議で本格合意に至ったのは初めて。双方の不信解消に向けた一歩となる。オバマ米大統領は合意を受け、「初めてイランの核計画の進展を止めた」と意義を強調。イランのロウハニ大統領は「新たな展望を開くものだ」と評価した。
第1段階措置の実行期間は6カ月。米側発表によると、イランは(1)濃縮度5%超のウラン濃縮活動を停止(2)保有する濃縮度20%のウランを軍事転用が困難な形に転換(3)プルトニウム抽出につながる西部アラクの研究用重水炉建設を凍結-を行う。国際原子力機関(IAEA)が合意事項が順守されているかを確認する。
一方、6カ国側は、イランが海外から石油販売関連の収入のうち最大42億ドル(約4200億円)の送金を受けとることを認めるほか、金・貴金属類や石油化学製品の取引制限なども一部停止する。制裁の緩和は総額約70億ドル(約7000億円)相当。6カ月の間、追加制裁を科さない。
核兵器開発の疑惑を持つ欧米と「平和利用」を主張するイランは長年対立してきた。欧米は軍事転用が懸念される核開発活動の拡大阻止を優先させ、国連安保理決議が停止を求める濃縮活動について、5%に満たない低濃縮に限り容認した形。最終的な解決は今後協議する。(11月)20日に始まった今回の協議は3日間の日程を延長し、ぎりぎりの交渉が続けられていた。(ベルリン 宮下日出男/SANKEI EXPRESS)
≪疑惑発覚から11年 決裂の歴史≫
反体制派の暴露で2002年8月に発覚したイランの核兵器開発疑惑。これまでの核協議は、合意目前で決裂を繰り返す曲折の歴史をたどってきた。
保守穏健派のロウハニ現大統領が核交渉責任者だった03年、イランは大幅に譲歩し、核兵器開発につながる恐れのある濃縮ウランの生産を一時停止。国際原子力機関(IAEA)の抜き打ち査察を可能にする追加議定書にも署名した。それまでで最も合意に近づいた時だった。
だが、欧米は「完全で継続的」な生産停止を求め、IAEAによるイラン非難決議の採択を主導するなど圧力を強めた。イランは反発し、06年に生産を再開した。
その後、欧米側は、生産停止と引き換えに軽水炉の建設技術を提供するなどの「見返り案」を提示したが、合意には至らなかった。この間に国連安全保障理事会はイラン制裁決議を3度採択、イラン包囲網が狭まった。
次の転機は09年。イランは欧米が提案した核兵器転用防止策に原則合意し、保有する低濃縮ウランの大半を国外に搬出して燃料棒に加工する案を受け入れた。合意への機運が再び高まった。しかし、対話と制裁の「アメとムチ」で核開発断念を迫る欧米側にイラン国内の強硬派が強く反発し、実施を拒否。イランはさらにウラン濃縮施設の増設を発表、濃縮度約20%のウラン生産を開始し、緊張が高まった。
10年6月、安保理は4度目の制裁決議を採択。その後もイラン産原油を標的にした制裁を強化し、協議は物別れを繰り返したが、13年8月、核問題解決に意欲を示すロウハニ師が大統領に就任すると、解決に向けた動きが一気に加速した。(共同/SANKEI EXPRESS)
・双方は6カ月で合意を実行し、包括的解決に向けて交渉
<イラン側>
・濃縮度5%超のウラン製造凍結
・備蓄する濃縮度約20%のウランを核兵器製造に使えない形に加工
・西部アラクの実験用重水炉の建設中断
<6カ国側>
・自動車や石油化学分野の禁輸一時停止。原油売上金の一部送金容認
・6カ月間は新たな制裁を科さない
・イラン産原油の禁輸措置は維持
2002年
8月 反体制派が核兵器開発疑惑を公表
2006年
4月11日 低濃縮ウラン製造成功を発表
12月23日 国連安全保障理事会がイラン制裁決議
2010年
2月9日 濃縮度約20%のウラン製造開始
2011年
1月22日 米欧など6カ国との核協議物別れ
2012年
1月9日 2カ所目の濃縮施設稼働が判明
4月14日 核協議が再開
6月28日 米国のイラン原油制裁法が発効
7月1日 欧州連合(EU)がイラン産原油の輸入禁止実施
2013年
6月14日 イラン大統領選投票。穏健保守派のロウハニ師当選
9月27日 オバマ米大統領とロウハニ大統領が電話会談
10月15~16日 ジュネーブで核協議
11月7~10日 ジュネーブで核協議
11月20~23日 ジュネーブで核協議
11月24日未明 6カ国とイランが合意