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三菱重工などトルコ原発正式受注 海外展開に弾む 「安全向上は責務」
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≪首相のトップセールス実る≫
三菱重工業を含む企業連合は10月29日、トルコが黒海沿岸の都市シノップで計画している原発建設を受注することでトルコ政府と正式に合意した。トルコを訪れていた安倍晋三首相(59)はその後、イスタンブールでレジュプ・エルドアン首相(59)と会談。正式合意を歓迎し、原子力分野での協力促進を確認する共同宣言を発表した。東京電力福島第1原発事故後、日本の原発輸出が正式に決まったのは初めてとなる。
安倍首相は会談後の共同記者会見で「原発事故の経験と教訓を共有することで世界の原子力安全の向上を図ることは日本の責務だ」と述べ、安全確保を前提に原発輸出を推進する考えを強調した。エルドアン首相も「トルコには原発が必要だ」と語り、日本の原発技術への期待を示した。
安倍首相は「大型インフラ事業をはじめ、経済分野での協力の方策についても議論した」とも説明した。
会談では、首脳級による安全保障の戦略対話を進めることで一致。両国が協力してトルコに科学技術大学を設立することや宇宙開発分野での協力促進も確認した。シリアやイラン情勢についても意見交換した。
両首相は会談に先立ち、ボスポラス海峡を横断する地下鉄の開通式典に出席。関連の行事が長引き、首脳会談の開始が約2時間遅れたため、予定した日本・トルコの経済連携協定(EPA)交渉に向けた事前協議開始の合意は見送られた。(イスタンブール 豊田真由美/SANKEI EXPRESS)
≪海外展開に弾む 「安全向上は責務」≫
東京電力福島第1原子力発電所の事故後、国内は原発の新設が見込めず、再稼働も進んでいない。三菱重工業や日立製作所など日本の原発メーカーにとって、海外市場に活路を求めざるを得ない状況の中、事故後初の原発輸出の決定は海外受注の弾みとなる期待がある。
新興国の経済発展や地球温暖化防止などを背景に中東やアジア、欧州などでは原発の需要が根強い。
三菱重工はトルコのほか、ヨルダンなどの原発建設に入札。日立は昨年11月に英国の原子力発電事業会社を買収した。原発建設や保守などを請け負う狙いだ。英国は先進国でも原発建設に前向きで、東芝も事業会社の買収を検討する。
国内原発の稼働停止を受け、2013年9月中間決算でも、保守作業の減少などで日立製作所や東芝は原発関連事業が営業減益になった。それだけに各社の海外案件獲得への期待は強く、東芝の久保誠副社長は「政府と一体となって進めていきたい」と、政府の積極関与を歓迎する。
ただ、原発輸出に力を入れるのはロシアや中国も同様だ。コスト競争力に加え、関連インフラの整備なども含めた政府の強力な支援で営業展開。三菱重工幹部は「信頼性や安全性は自信があるが、ロシア企業などは国と一体となっているのが脅威」と打ち明ける。
ロシア国営企業のロスアトムは日本勢に先行してトルコ初の原発を受注、ヨルダンや欧州でも日本勢と競合しており、中国メーカーも攻勢をかける。
福島第1原発事故後、安全性に対する要求は高まっており、事故が起きた場合の損害賠償リスクなども少なくない。日本が官民一体で、資金調達から原発の運転まで、パッケージで売り込んでいけるかが、今後の原発輸出のカギになる。(SANKEI EXPRESS)
≪総事業費2兆円≫
三菱重工業やアレバ(フランス)などの企業連合体が、トルコで建設予定の原発は2023年の運転開始を目指す。トルコから見ると、共和国発足100周年に合わせる意味合いがある。
建設予定地は黒海沿岸シノップで、出力110万キロワット規模の原発4基を計画している。安全性を高めた新型原子炉を採用する見込みだ。総事業費は2兆円ともいわれる。
三菱重工とアレバの連合は、ヨルダンで計画されている原発受注でロシア勢と競っており、トルコでの前進が後押しとなる可能性がある。(SANKEI EXPRESS)