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「ハリポタ」記念切手めぐり物議 赤字解消の“魔法”は商魂主義か

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「ハリポタ」記念切手めぐり物議 赤字解消の“魔法”は商魂主義か

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映画「ハリーポッター」シリーズで主演を務めたダニエル・ラドクリフさん  米郵政公社(USPS)が11月19日に発売した世界的人気の映画「ハリー・ポッター」シリーズの記念切手が米国内で物議を醸している。

 電子メールの普及による手紙の利用減などで赤字が膨らむUSPSが、打開策のひとつとして実施した斬新な取り組みだが、大喜びのハリポタファンに対し、昔からの切手収集家たちは、ハリポタの登場人物が英国人であることや、切手の図柄が一般的な絵画調ではなく、映画の場面写真の流用であることなどに強く反発。「商業主義に走り過ぎだ」との厳しい声まで出ている。

 大ヒット予想も…

 米業界誌ハリウッド・リポーターや米紙ワシントン・ポスト(いずれも電子版)などによると、切手は映画化権を所有する米ワーナー・ブラザースとUSPSが共同で制作。1シート20枚入りで価格は9.2ドル(約920円)。1枚の額面は46セント(約46円)。総発行数は500万セットにのぼる。

 主人公ハリーのほか、ハリーの友人で同級生のハーマイオニーや、最大の敵である闇の魔法使いヴォルデモートら、映画の主要な登場人物の場面写真をあしらっている。

 19日に米テーマパーク「ユニバーサル・オーランド・リゾート」(フロリダ州)で開かれた会見で、ワーナーの消費財部門担当責任者、ブラッド・グローブ氏は「ハリポタ・シリーズの愛すべき登場人物たちをUSPSとともに(記念切手という)ユニークかつ歴史的な方法でファンにお届けでき、誇りに思う」とあいさつ。

 USPSのミッキー・バーネット取締役会長も「教室でのおふざけから魔法の生き物との激しい戦いまでを描くハリポタの切手は、あらゆる世代に強くアピールするだろう」と大きな期待感を示した。

 実際、米では当初、これからクリスマスカードを送る時期に突入することもあり、ファンが熱狂。約20年前に登場した米歌手エルビス・プレスリー(1935~77年)の記念切手以来の爆発的ヒットが予想されている。

 ところが、有名な切手収集家で知られる米国郵趣協会のジョン・ホッチナー前会長が「ハリー・ポッター(の登場人物たち)は米国人ではなく、(映画も)外国のもので、切手の発売はあからさまな商業主義だ」と強く批判するなど、古参の切手収集家が反発の声を上げ始めた。

 背に腹は代えられず

 とはいえ、USPSの危機的な財政状況を鑑(かんが)みれば納得もいく。昨年度に160億ドル(約1兆6000億円)もの損失を計上したUSPSは、経費削減策として8月から土曜日の普通郵便の配達を停止するなど、抜本対策に乗り出している。

 さらに、ハリポタ切手に関し、慣例に反して諮問委員会の助言を求めず、“見切り発車”で発売を決めたことも古参収集家や保守的な切手ファンの非難を高めている。

 だが、USPSは今後も英のビートルズや米アップルの創業者、スティーブ・ジョブズ氏(1955~2011年)の記念切手の発売を計画。パトリック・ドナヒュー米郵政長官は「USPSは発想を変え、もっとよく売れそうな切手を販売すべきだ」と語り、背に腹は代えられない、といった態度。

 今後も“売れ筋”の記念切手が予想され、一部の収集家の批判に耳を貸す余裕はなさそうだ。(SANKEI EXPRESS

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