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【クレモンティーヌのパリ便り】初音ミクに衝撃 賛否両論
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前衛的(アバンギャルド)なものに慣れたパリっ子をも驚かせた初音ミク(ハツネミク)のミュージカル。地下道に大きなポスターが張られてました=2013年11月14日、フランス・首都パリ(クレモンティーヌさん提供) 皆さん、お元気ですか?
今パリは、伝統ある劇場「テアトル ドゥ シャトレ」で開催されているある舞台の話題で持ちきりです。
その舞台とは「日本発のバーチャルアイドル」初音ミク主演のオペラ。バーチャルアイドル?! その上オペラ? そしてテーマは「死」? アート好きのフランスの新聞やラジオでは「初音ミク」の特集を組み、その存在と今回の舞台について解説しました。
そのせいか観客のほとんどが大人で、普段の日本系「カワイイ」イベントに訪れるようなコスプレの若者の数は少なかったです。
2年前にミクとデュエットしたので、ボーカロイドのシステムは理解していましたが、その時は声だけの共演でした。日本には伝統芸能である人形劇「人形浄瑠璃」があり、命のない人形に魂を吹き込むという文化がある、ミクは現代の人形浄瑠璃なのだと説明してもらったことがあります。
今回の舞台を見て実感しました。バーチャルだからこそ伝わる感覚を駆使して創られた「日本の若手クリエーターの新たなる挑戦」を強く感じました。
前衛(アバンギャルド)であること、結果を恐れず何かを提案することだけが、物事を前進させる力を持つのだと思います。前衛的なものは、人を不安にさせ、時には不快にさせたりします。それに対して後衛(キッチュ)なものに人は安心するのだと思います。
今回の舞台には、普段から前衛的なアートに慣れているパリ中のインテリが集まったとも言えますが、そんな彼らですら大きな衝撃を受けていました。この新しいアートに正に賛否両論。素晴らしい現象です。
同時にアイドル、ミクちゃんのコンサートを見たかった若者たちには不評だったと思います。確かに彼らが期待する「いつものかわいいミクちゃん」とは違う、ディープな世界は難解。しかし一つの表現方法として今回の舞台を見たことは、いつかきっと彼らにとってプラスになっていくことでしょう。
子供の頃、初めて聴いたフリージャズは不快だったけれど、その世界に触れさせてくれた両親に感謝しています。わからないものに触れること、経験することは人生を豊かにする大切な鍵だと信じています。
文化がなくても生きて行けますが、文化は私たちの五感を刺激し、人生をより豊かなものにしてくれるものですから。
次回は皆さんから反響が大きかった「介護」についてもう少し詳しくお話しさせていただきたいと思います。(フランス人アーティスト クレモンティーヌ/SANKEI EXPRESS)