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福島復興へ追い風 「海に浮く」風力発電始動

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福島復興へ追い風 「海に浮く」風力発電始動

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福島県楢葉(ならは)町の沖合20km、浮体式洋上風力発電所=2013年11月11日、※実用化に向けた実証試験開始  東日本大震災から2年8カ月となる11月11日、政府は福島県楢葉町の沖合20キロで、「浮体式」と呼ばれる洋上風力発電施設の実用化に向けた実証試験を始めた。震災と原発事故に苦しむ福島を再生可能エネルギーの拠点とする“追い風”で復興を後押しする国家プロジェクトだ。施設には、浮体式で世界初となる洋上変電設備を備えており、来年度には発電能力を浮体式で世界最大規模とする計画だ。

 国家プロジェクト

 「福島を風力発電の中心地にしたい」

 福島県の佐藤雄平知事はこの日、福島県いわき市で開かれた実証試験の開始式でこう強調した。赤羽一嘉経済産業副大臣も「震災による原発事故で大きく傷つけてしまった福島を再生可能エネルギー先駆けの地とすることは政府にとって使命であり、悲願でもある」と訴えた。

 試験では、東北電力を通じて約1700世帯に電気を供給。3年かけて発電効率や環境への影響を調査する。

 沖合に出力2000キロワットの発電設備「ふくしま未来」と変電設備「ふくしま絆」を設置し、送電網を海底ケーブルでつないだ。未来の大型風車は直径80メートルあり、海面から風車の頂点までの高さは106メートルに達する。変電設備は高さ60メートルで、塔のような外観だ。いずれもいかりをつけた巨大な鉄製の鎖で海底に固定している。経産省と福島県の委託を受け、東大や丸紅、三井造船などの大手企業のほか、中小企業の持つ最先端技術を結集した。

 関連産業で雇用創出

 来年度には、出力7000キロワットの風車を載せた発電設備2基を設置する計画で、施設の発電能力は計1万6000キロワットと、浮体式では世界最大になる。洋上変電設備があれば、発電設備を増やしても海底ケーブルを増設する必要がなく、建設コストを抑制できる利点があるという。

 政府は漁業への影響を心配する地元漁業関係者の理解を得たうえで、出力10万~30万キロワットの浮体式洋上風力発電所とすることを目指す。

 洋上風力の発電設備は羽根や大型軸受け、発電機など部品点数が約2万点もあり、産業の裾野が広い。佐藤知事は「県内の中小企業が非常に優れているので、さまざまな部品でお手伝いできる」とし、関連産業の集積や雇用創出につなげたい考えだ。

 再生エネの「主役」

 洋上風力は陸上よりも建設コストがかかるが、安定して強い風が吹くため発電効率は高い。領海と排他的経済水域(EEZ)などを合わせた海域が世界6位の海洋国家・日本にとっては、再生可能エネルギーの“主役”と位置づけられている。

 先行する欧州で主流となっている海底から建設する「着床式」に適した遠浅が少ないという弱点を解消できる浮体式の実用化が普及のカギとなる。政府は、成長戦略の中で浮体式の実用化を掲げており、福島沖に先駆けて、長崎県の五島列島沖でも実証試験を行っている。

 今回の試験は、福島の復興を象徴するプロジェクトともなるだけに、関係者は大きな期待を寄せている。(SANKEI EXPRESS

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