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冬の節電 北海道「6%」目標設定へ

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冬の節電 北海道「6%」目標設定へ

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 経済産業省は10月23日、今冬の電力需給対策について有識者が議論する「電力需給検証小委員会」の会合を開き、北海道電力の管内で数値目標付きの節電要請を行うよう政府に求める報告書をまとめた。政府は北海道に対し、2010年度比で6%前後の数値目標を設定する方向で、月内にも関係閣僚会議を開いて今冬の需給対策を決定する。

 報告書では、最も需給が厳しい来年2月の予備率(最大需要に対する供給余力)について、安定供給に最低限必要とされる3%を全国で確保できる見通しを示した。北海道の予備率は従来6.9%を見込んでいたが、新たに風力発電を供給力として加えたことで7.2%に上昇した。

 ただ、北海道は冬の寒さが厳しいうえ、本州から電力融通を受けられる容量に限りがあるため、数値目標付きの節電が必要と判断した。九州電力や関西電力など、北海道を除く各電力管内については数値目標を設定せず、自主的な節電要請をするよう求めた。

 柏木孝夫委員長(東工大特命教授)は会合で「北海道は特に厳しい状況になるので、政府には多重的な需給対策を早急に打ち出してもらいたい」と述べた。

 ≪火力トラブル増加傾向 「アベノミクス」で需要増も≫

 関電・九電 綱渡り

 今冬の節電は、北海道電力を除いて数値目標を設けない見通しだが、大規模停電となるリスクが消えたわけではない。原子力発電所の再稼働が見通せない中、電力各社は火力発電所の定期検査を延長するほか、他電力からの電力融通により、今冬の電力需要をまかなう方針だ。安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」による景気改善で、企業の電力需要が高まる可能性があるほか、フル稼働が続く火力発電所のトラブルも懸念されるなど、いぜん綱渡りが続く。

 経済産業省がまとめた報告書によると、沖縄を除く9電力のうち、最大需要に対する供給余力を示す予備率が2桁を確保できるのは東京電力(10.2%)1社にとどまる。北海道電力の予備率は7.2%だが、火力発電所の苫東厚馬4号機(出力70万キロワット)が1基停止するだけで、供給力がマイナスとなる危険な状態だ。

 また、東日本大震災前、発電電力量の4~5割を原発に頼ってきた関西電力と九州電力の予備率は、最低限必要とされる3%台と極めて低い水準だ。

 特に国内の原発で唯一稼働していた大飯3、4号機(計236万キロワット)が9月に定期検査のため停止した関電は、初めて「原発ゼロ」のまま冬の節電を迎える公算が大きい。関電は今月(10月)1日に期限を迎える予定だった火力6基の定期検査を延長。12月に期限切れとなる2基も延長申請する計画で、電力供給は火力頼みだ。

 関電は中部、北陸、中国の3社から計152万キロワット、九電も計71万キロワットの電力融通をそれぞれ受ける前提で予備率は算出されている。しかし、原発の停止が長期化するなかで、高稼働を強いられた火力発電所の計画外停止は年々、増加傾向にある。各社で設備トラブルが相次げば、融通も期待できなくなる。

 さらに電力各社は「景気回復に伴い、例年より需要が拡大する恐れがある」とアベノミクスに伴う需要増にも懸念を示す。報告書では、経済影響による今冬の9電力管内の電力需要について、東電管内を中心に、2012年度比で236万キロワット増加すると見込む。

 「頼みの綱」の原発は、5電力が計7原発14基の再稼働に向けた安全審査を原子力規制委員会に申請した。だが、各社の準備の遅れなどから、再稼働時期は来春以降にずれ込む公算が大きい。想定以上の寒波に耐えうる供給態勢の確保は急務だ。(SANKEI EXPRESS

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