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世界遺産「富士山」 抱える課題と取り組み(上) きれいに安全に 登山者の意識変化

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世界遺産「富士山」 抱える課題と取り組み(上) きれいに安全に 登山者の意識変化

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山梨県富士河口湖町のキャラクター「ふじぴょん」=2013(平成25)年(中央大学FLP深澤ゼミ_有志学生記者撮影)  【Campus新聞】

 静岡、山梨両県にまたがる富士山が今年6月、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の「世界文化遺産」に登録された。「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」として、山そのものと周辺の24の構成資産が対象となっていて、各地が悲願成就に沸いている。ただ、世界遺産ブームに伴う登山者の急増のほか、環境破壊や乱開発などを懸念する声も多い。中央大学FLP深澤ゼミの学生記者(リーダー、滝口信之さん)たちが、世界遺産となった富士山が抱える課題を取材した。

 □今週のリポーター 中央大学 FLP深澤ゼミ有志学生記者

 ≪富士河口湖町のキャラクター「ふじぴょん」≫

 「富士山取材班」はまず、計25の構成資産のうち8つがある山梨県富士河口湖町へと向かった。

 この町には、世界遺産登録に合わせて6月30日に発表された富士山をモチーフにしたゆるキャラがいる。「ふじぴょん」だ。ふじぴょんは自由奔放な明るい女の子で、かぐや姫が月から送った使者という設定だ。かぐや姫が富士山の女神だという伝説に基づいている。好物は町で栽培されている古代米で、体重は秘密だそうだ。

 町の観光PRが使命で、1日1000円で最大7日間、イベントなどに参加してくれる(町民や町内で活動しているグループに着ぐるみを貸し出す)。収益金は、富士山の保全活動などに使っていく予定だ。

 住民からの評判も「かわいい」「癒やされる」と良好だ。富士河口湖町政策財政課政策調整係長の渡辺昭一さん(51)は「キャラクターってすごいですよ。すぐに子供たちが集まって来る」と、人気を実感している。ふじぴょんは(2013(平成25)年)11月23日から埼玉県羽生市(はにゅうし)で開かれる「ゆるキャラさみっと」にも参加する予定だ。

 渡辺さんは去年の7月末に富士山に登った際、大きな変化を感じたという。

 「ゴミのにおいではなく、自然の香りがした。ゴミがない。えー! こんなにきれいになったの!って思いました」

 世界遺産登録を受けた登山者らの増加に伴うゴミ問題が心配されているが、「マナーや意識が変わり始めていると思います。ゴミ以外にも不法投棄の問題もありますが、それも少しずつ変化していくんじゃないかなと思います」と期待する。

 「今まで窓を開けるといつも見えていた富士山が、今は世界の富士山になった。どうやって後世にこのまま残していけるかというのが、大きな課題です」と、渡辺さん。世界遺産への登録はゴールではなく、新たなスタートなのだ。富士河口湖町も、ふじぴょんと一緒に課題の解決に取り組んでいく。(今週のリポーター:中央大学 FLP深澤ゼミ有志学生記者 印南夏子/SANKEI EXPRESS

 ≪外国人向け富士登山案内サイト運営の前田文子さん≫

 富士山は日本を訪れる外国人にとっても人気スポットになっているが、今回の世界遺産登録は海外、特に欧米のメディアでほとんど報じられておらず富士山の文化的価値が十分に理解されているとは言い難いと感じられた。

 「欧米人にとって登山は『レクリエーション』の一環であり、日本古来の山岳信仰という風習はなく、理解するのは難しいかもしれません」。外国人向け富士登山案内サイト「Mount Fuji climbing and sightseeing guide」を運営する前田文子さん(44)は、こう語る。

 欧米では、山は信仰の対象ではなく、山頂に立つ攻略の対象となってきた。外国人にとっては、富士山も単なる登山の対象でしかないのかもしれない。世界遺産登録を機会に、海外への情報発信などを通じて、文化遺産としての富士山の価値を外国人に理解してもらうことも大きな課題だ。

 7、8月の山開き期間以外の時期に登って滑落などの遭難事故を起こす事例が後を絶たず、その中には外国人登山者も少なくない。前田さんのサイトでは、安全に富士登山を楽しめる情報を提供している。

 「富士登山について、まだまだ情報量が不足しています。海外には富士山よりも高い山がたくさんあるので、単に標高だけで判断し、ハイキングの感覚で登る外国人が多いように感じます」。海外のサイトには混雑を避けるため、冬登山を奨励するかのような記述もあるという。

 「サイトからの情報提供は一方通行です。より良いサイト作りをしていきたい。例えば、5合目で外国人登山者にアンケートをして、生の声を反映させたりしたいですね」と、前田さんは意気込んでいる。(今週のリポーター:中央大学 FLP深澤ゼミ有志学生記者 玉野雄也/SANKEI EXPRESS

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