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【エコノナビ】入山制限と入山料徴収をセットで

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【エコノナビ】入山制限と入山料徴収をセットで

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 飛行機で東京から大阪まで旅する際に楽しみにしていることがある。富士山を眼下に眺めることだ。大地から富士山が形よく盛り上がっていて、稜線(りょうせん)の美しさにいつも見とれてしまう。

 その富士山が世界文化遺産に登録されることが決まった。行き過ぎた山麓開発やゴミ問題などのため、自然遺産での登録が困難視され、静岡、山梨両県の関係者らは、山岳信仰や浮世絵などを通しての世界的知名度に着目した文化遺産としての登録に賭けてきただけに、喜びはひとしおだろう。

 富士山の世界文化遺産登録決定を受け、ホテル・旅館、旅行業者などの観光業界はじめ、地元商店街はさまざまなツアー企画や記念商品を発売し、集客に余念がない。

 しかし、問題はこれ以上の登山者が内外から押し寄せても大丈夫だろうかということである。環境省によれば、7月1日から8月31日までの夏山登山者は2008年に30万人を超えて以来、毎年ほぼ30万人前後で推移しており、ピーク日には登山者が1万人を超える状況になっている。

 それにあわせて深刻化しているのが、ゴミだけでなく、登山者増に伴う流土などへの対応や安全対策だ。これについては、今回の登録認定とは別に、世界遺産への登録の可否を調査するユネスコの諮問機関「国際記念物遺跡会議」(イコモス)から16年2月1日までに「保全状況報告書」を提出するよう求められている。ドイツのドレスデン・エルベ渓谷が、景観を損ねる橋の建設を理由にわずか5年で世界遺産登録を抹消された例もある。日本は本気で環境保全などに取り組まなければならないだろう。

 それには、自然遺産に登録されている北海道・知床半島で行われているように、入山制限と入山料徴収をセットで行うことである。登山客や、観光客増大に期待している地元から不満の声が出るかもしれないが、長い目でみれば、入山制限をした方が自然保護と観光振興を両立できる。日本だけでなく、世界の至宝となった富士山。その意味をどこまで理解していくかが今後問われてくる。(気仙英郎/SANKEI EXPRESS

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