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混乱続くオバマケア

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混乱続くオバマケア

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 バラク・オバマ大統領(52)の看板政策である医療保険制度改革(オバマケア)をめぐる混乱が広がっている。オバマ政権は来年1月から始まる個人に対する保険加入義務化を前に、今月(10月)1日、各種医療保険を比較したうえで申し込みできるポータルサイトを開設。ところがこのサイトでシステム障害が起き、約1カ月たった今も問題は解決しないままだ。野党共和党はキャスリーン・セベリウス厚生長官(65)の辞任を求めるほか、個人に対する保険加入義務化の先送りにも狙いを定める。オバマ政権は共和党の要求を払いのけてはいるが、今後の状況次第ではオバマケアで提供される保険の骨格が揺らぐ恐れも指摘されており、厳しい立場に立たされる可能性もある。

 システム障害でつまずき

 2010年に関連法案が成立したオバマケアは米国内に約4800万人いる無保険者の解消を目指し、政府主導で低価格の保険を提供するとともに、14年1月から個人に保険加入を義務づけることが柱だ。今月(10月)1日の医療保険ポータルサイト開設で、無保険者の解消が進み始めるはずだった。

 しかしサイトの運営開始直後から、利用者からは「利用者登録を試みても『しばらくお待ちください』というメッセージが出るだけ」「作るのに3日かかったパスワードでログインしたらエラーになった」といった不満が噴出。オバマ政権はトラブル解消に向けて技術者を大量動員するなどしているが、現在でも問題は解消されていない。

 オバマ政権は、10月20日までの加入申請は独自のサイトを運営する14州分も含めて約50万件だったとしている。しかし米CNNテレビは「政府が想定していた3月末までに700万件というペースに達していない」と指摘。オバマケアの本格導入はいきなりのつまずきをみせた形だ。

 厚生長官に辞任要求

 (10月)1日から16日間続いた政府機関閉鎖などをめぐる協議でもオバマケア批判を展開した共和党からは、セベリウス氏に対して「3年半も準備を重ねて失敗した」(ロバーツ上院議員)として辞任を求める声があがる。オバマケア批判の急先鋒であるテッド・クルーズ上院議員(42)も、オバマ政権がサイト運用開始直前になって仕様変更を指示したとの指摘を踏まえ、「こうした指示が障害の原因の一つだ」と主張し、政権の責任を追及する。

 またオバマケアでは保険加入義務付けの観点から、来年3月末までに保険に入らなければ「罰金」が科される決まりだが、サイトの障害で保険にスムーズに加入できない状況を踏まえれば、保険加入義務化を事実上先送りし、罰金を科すべきではないとの声も上がっている。共和党のラマー・アレクサンダー上院議員(73)は23日、保険加入義務化を「少なくとも1年は先送りすべきだ」と主張。民主党のジーン・シャヒーン上院議員(65)も「個人がサイトの障害の結果として保険を購入できないのであれば、保険未加入を理由に罰金を科すべきではない」と主張する。

 先送りの可能性を否定

 こうした批判に対してジェイ・カーニー大統領報道官(48)は21日の時点では、「何らかの理由」で低料金の保険を見つけられない場合は罰金を科さないと表明。サイトの障害の影響が重大と判断されれば、事実上の保険加入義務化先送りもありうるとの見方を示唆した。しかし23日には、インターネットサイト以外でも電話、郵便、病院窓口などを通じて「低料金の保険を購入することは可能だ」と繰り返して強調し、保険加入義務化先送りの可能性を否定している。

 オバマケアの問題はサイトの障害だけにとどまらない。オバマケアで提供される保険は病歴のせいで保険に入れない個人でも比較的低料金で加入できるのが売り物だが、「若くて健康な人にとっては保険料が割高になる」(マサチューセッツ工科大学のグルバー教授)との分析もある。この結果、健康な若年層がオバマケアで提供される保険を敬遠し、病歴がある個人や高齢者ばかりが加入することになれば、全体として保険料収入に対して保険金支払いが高くなりすぎる懸念もふくらむ。

 オバマケアをめぐってはこれまでも、企業に従業員への保険提供を義務づける制度の実施が15年1月まで1年間先送りされるなど、理想と現実のギャップが目立っていた。無保険者の解消という歴史的な業績の実現を目指すオバマ氏だが、自身の想像を超える困難に直面しているようだ。(ワシントン支局 小雲規生(こくも・のりお)/SANKEI EXPRESS

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