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猶予数カ月 行く手阻む3つの関門 米デフォルト回避
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米財政協議はデフォルト(債務不履行)回避を優先するあまり、抜本的な問題解決がまたも先送りされた。時を置かず危機が再燃する恐れに加え、与野党の激しい対立、厳しさを増す市場の評価という3つの関門が今後の財政協議の行く手に立ちはだかる。
今回手当てできた支出は債務上限引き上げで4カ月弱、政府機関再開で3カ月にすぎない。債務上限で1年以上の引き上げを求めたバラク・オバマ大統領(52)の願いにはほど遠い。会見で「数カ月後に同じ危機が起きないか?」と問われたオバマ氏は「起きない」と苦笑いをみせたが、IHSグローバル・インサイトのエコノミスト、ポール・エデルスタイン氏は「時間的猶予が乏しい。年明けに同じ危機が繰り返される」と危ぶむ。
時間的制約に加え、財政運営をめぐる与野党の埋めがたい溝も解消は容易ではない。今回の協議で焦点となった医療保険改革(オバマケア)はオバマ政権の看板政策だが、野党共和党には歳出を膨張させる元凶と映る。当初求めた延期などの大幅な修正は見送られ、「国民に災厄をもたらす」(クルーズ上院議員)など保守派の不満は強い。
オバマケアをはじめ社会保障の充実には増税も辞さない「大きな政府」を掲げる民主党に対し、社会保障への切り込みを軸に歳出削減による「小さな政府」を志向する共和党。互いの党是がかかるだけに、財政協議は簡単に折り合えない。
与野党は財政赤字削減に向けた抜本的な財政協議を超党派で行う委員会の設置も決め、12月13日までに結論を勧告させるとしたが、難航は必至だ。実は前回2011年のデフォルト騒ぎの直後にも与野党は同様の超党派委員会を設けたが、協議は決裂。その後の財政協議にしこりを残した。
やはり大騒動となり、今年初めに何とか回避された「財政の崖」など財政協議の迷走が重なり、米国の市場の信認も失墜した。デフォルトは回避できたが、フィッチ・レーティングスが米国債の格下げの可能性を警告するなど、格付け会社の動向は油断がならない。
共和党のジョン・ベイナー下院議長(63)は「オバマケアに対抗していく。闘いは続く」と早くも“戦闘再開”を宣言。かりそめの休戦協定すら意味を失い、財政協議の迷走が、米国と国際社会を再び危機に突き落とす懸念はぬぐえないままだ。(ワシントン 柿内公輔/SANKEI EXPRESS)
≪中国歓迎も米国債離れ懸念≫
中国外務省の華春瑩(か・しゅんえい)報道官は10月17日の定例会見で、米国の債務上限問題で「進展があったことを歓迎する」と述べた。7月末時点で外貨準備高の約3分の1にあたる1兆2773億ドル(約126兆円)を米国債で保有する中国には、ひとまず安堵(あんど)の色が広がっている。
ただ、米債務上限をめぐって来年1月にも再び混乱するリスクも残されており、中国商務省の沈丹陽報道官は17日の記者会見で、「米国債のデフォルトは世界の景気回復の足を引っ張り、ドル安を招いて中国の輸出にも影響を与える」と米政府に抜本的な解決を促した。ドル安環境の中で人民元高が続いており、引き続き警戒する必要があるとみている。
このため、中国の専門家の間では、「米国との共倒れを避けるため、米国債の保有高を減らせ」とする主張も強まっている。
清華大学(北京)の李稲葵教授は17日、「米国債の格下げがあれば、各国が保有する米国債を売却する新たな時代に入る」と強調し、外貨準備での米国債への過度の依存を減らすよう求めている。
しかし、米国債の保有高で世界最大であり、米財政最大のスポンサーともいえる中国が、実際に米国債を一部でも売却する動きに出れば、金融市場で米国債が暴落してドル安も招く。米国債も含めて、外貨準備高の約半分をドル建て債券に依存する中国にもブーメランのように負の影響として戻ってくるため、悩ましいジレンマとなっている。このため、米財政の立て直しが自国にとっても有利と考えた中国は、李克強首相が今月(10月)9日、訪問先のブルネイでケリー米国務長官と会談し、米債務上限問題に「高度な関心」を示して強い懸念を伝えるなど、米国にデフォルトを回避するよう圧力もかけてきた。(上海 河崎真澄/SANKEI EXPRESS)