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既定路線のままで幸せなのか問う 益岡徹、成河 舞台「ショーシャンクの空に」

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既定路線のままで幸せなのか問う 益岡徹、成河 舞台「ショーシャンクの空に」

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 絶望を乗り越え、希望を取り戻していく男たちの姿を描き、名作といわれた映画「ショーシャンクの空に」(1994年)が、日本で初めて舞台化され、11月2日からサンシャイン劇場(東京)で開幕する。ダブル主演となる益岡徹(57)と成河(ソンハ、32)がそれぞれの役柄を通じて伝えるのは、どんな状況にあっても希望を胸に持ちさえすれば、いつか道を開くことができるという力強いメッセージだ。

 どこでも希望を持ち

 主な舞台はショーシャンク刑務所の塀の中。制約された境遇のなか、人生の何もかもをあきらめていた老囚人レッド(益岡)が、自分を見失わずに生きる元エリート銀行家アンディー(成河)と出会い、友情をはぐくみながら、少しずつ心を再生させていく物語だ。

 「本来、レッドは静かな人間。どこかで運命が掛け違ったがために、凶悪犯になってしまった。つながれた身では、意志や希望は持ってはいけない、無駄だと考え、“刑務所の常識”におさまって暮らしてきたんだと思います」と益岡。老囚人があきらめの心境に至った経緯に、思いをめぐらせて演じる。

 一方、アンディーは、対照的に「あきらめない」男。持ち前の会計知識を駆使し、所長や看守に“便宜”を図る見返りに、刑務所図書館の蔵書や、映画上映の回数を増やすなど、塀の中でもコツコツと服役囚たちの自由を勝ち取っていく。ショーシャンクでただ一人、希望の象徴として描かれる。

 「刑務所の囚人たちからすれば、アンディーは突然、舞い降りた聖人のようですが、彼は合理的で当然だと思ったことを行動に移しているだけ。正義漢ぶっているわけじゃない。ずっと希望を絶やさなかったのかといえば、違うのかも…。入所当初はくじけそうになったのでは、とも思います。アンディーの微妙な心境の流れを突き詰めていきたい」と成河はアンディーにも劣らぬ冷静な分析眼を披露し、クールなアンディーの内面に迫っていく意欲を示した。

 原作を大胆アレンジ

 演出は河原雅彦、脚本は喜安浩平。ともにマルチな才能を誇り、注目を集める2人がタッグを組んだ。タイトルこそ映画版にあやかったが、喜安はスティーブン・キングによる原作「刑務所のリタ・ヘイワース」を大胆にアレンジし、魅力的な女性たちを舞台版ならではの登場人物として加えた。

 「ここまで小説とも映画とも違う脚本が書けるなんて、喜安さんには驚きました。その分、簡単には(場面が)立ち上がってこないので、河原さんがとても苦労しています」と成河。益岡も「河原さんが喜安さんの設計図を丹念に形にしようとするのが伝わり、キャストも真っ正面から台本と向き合っています。みんなが思いを一つにしているって感じです」と、新生「ショーシャンク」の上演に向け、現場一丸で生まれた熱の高さを伝える。

 心を閉ざさず変化する

 そうやって練り上げた舞台が幕を開けたとき、2人は観客に、どんなメッセージを届けたいと考えているのか。

 「思考を停止させて刑務所の日々をやり過ごしてきたレッドに、アンディーは『それでいいの』と問い続けました。アンディーの問いは、今の社会に生きる、われわれにも向けられていたのかもしれませんね。固定観念や既成事実、常識など、守らねばならないものだらけの世の中で、何も疑わず、既定路線に従って生きるのが、果たして幸せなの?って」と益岡。

 かたや成河は、アンディーにひたすら心をノックされ、堅く閉ざした心の扉を開いたレッドの、大きな変化に気持ちを寄せた。「変化を恐れる気持ちもわかるし、わざわざ変わらなくても済んでしまう世の中かもしれない。けれど、何かを乗り越えて変化した人の姿には、はっとさせられるものがあります。心を閉ざさず、影響しあってこそ、人は前へと変わっていける。舞台の稽古場でも同じです。舞台をともに作る仲間たちと、変化していけたら…素敵ですよね」(文:津川綾子/撮影:フォトグラファー 宮崎裕士/SANKEI EXPRESS

 ■ますおか・とおる 1956年、山口県下関市出身。早稲田大卒業後、仲代達矢主宰の「無名塾」4期生に。映画やドラマ、舞台など幅広く出演。情感のあるナレーションにも定評があり、ドキュメンタリー番組やラジオドラマなどでも活躍している。最近はWOWOWのドラマ「レディ・ジョーカー」(2013年)、映画「臨場・劇場版」(12年)などに出演した。

 ■そんは 1981年、東京都出身。法政大学在学中に劇団「ひょっとこ乱舞」の旗揚げに参加。北区つかこうへい劇団をへて、2004年、「エンジェルス・イン・アメリカ」(ロバート・アラン・アッカーマン演出)のエンジェル役に抜擢される。08年度の文化庁芸術祭で演劇部門新人賞受賞。11月2日にドラマ「実験刑事 トトリ2」(NHK)に出演する。

 【ガイド】

 11月2~10日 サンシャイン劇場(東京)。ナッポスユナイテッド(電)03・5342・0909。11月16~18日 サンケイホールブリーゼ(大阪)。キョードーインフォメーション(電)06・7732・8888。※福岡、名古屋、長野県松本市でも上演する。

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