SankeiBiz for mobile

温かみある音色で印象派の曲披露 ピアニスト リーズ・ドゥ・ラ・サールさんインタビュー

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSのエンタメ

温かみある音色で印象派の曲披露 ピアニスト リーズ・ドゥ・ラ・サールさんインタビュー

更新

 【サウンドボックス】

 若手演奏家の「今」を聴く「プロジェクト3×3」に、フランスの若手ピアニスト、リーズ・ドゥ・ラ・サールが出演、東京・紀尾井町の紀尾井ホールでリサイタルを行った。

 子供の頃から日本製愛用

 前半はラヴェルの「鏡」、ドビュッシー「前奏曲集」より、などのお国もの、後半は、プロコフィエフ「ロミオとジュリエット」からの10の小品というプログラム。ヴィルトゥオジティー(技巧)が際立つプロコフィエフもよかったが、輝かしいだけでなく、温かみのある音色で演奏された印象派のラベルとドビュッシーの作品が、彼女の個性を表していた。

 「練習するときは音を探すことを意識します。音は永遠に探していくものです。音は楽譜の中に書いてありますが、エモーションを探さなければなりません。音によってエモーションを伝えなければいけないからです」とドゥ・ラ・サールは語る。

 「ピアノがない暮らしは思い出せない」というくらい、幼いときからピアノが側にあった。祖母が贈ってくれたピアノは日本のカワイ。今でもカワイで練習している。

 「今の私があるのは、カワイがあるからです。演奏をするホールのピアノは、ほとんどがスタインウェイです。練習では、作曲家の意図に応じた発想の幅が必要です。カワイで表現が難しいことも、スタインウェイではこんなに簡単にできるんだ、と思うこともあります。いつかはスタインウェイを持ちたいですが、練習用のカワイを手放すことはしません」

 15歳でコンクールから卒業

 子供のころはリヒテル、ホロビッツ、ギレリス、ケンプらさまざまな演奏家の録音を聴いた。ピアニストになりたい、と10歳から15歳の間は、年に3、4回はコンクールを受け続けた。15歳のとき、ニューヨークのヤング・コンサート・アーティスツ国際オーディションで優勝し、すっぱりコンクールを受けることをやめた。

 「若い人たちがコンクールに出場する理由は、レコード会社とコンタクトし、エージェントとの出会いが欲しいからです。私はありがたいことに、14歳のときその出会いがありました」

 最近のアルバムは「マゼッパ~リスト作品集」。有名な「ダンテを読んで」、愛らしいシューマンの作品を編曲した「愛の歌(献呈)」、「超絶技巧練習曲」より「マゼッパ」などが収められている。

 「リストは超絶技巧のことだけがいわれがちですが、ほかの個性を聴いてもらうために作りました。示威的な面だけでなくひそやかな表現も愛していました。目の前の人だけに語るような重苦しいところもあります。リストのさまざまな側面を聴いてください」

 来年は、「ロマン派の作曲家で一番身近に感じる」シューマンのアルバムをリリースする予定。(月刊音楽情報誌「モーストリー・クラシック」編集長 江原和雄/SANKEI EXPRESS

 ■Lise de la Salle フランスのシェルブール生まれ。パリ国立高等音楽院でピエール・レアシュに、2001年からは大学院課程でブルーノ・リグットに師事。1997年からパスカル・ネミロフスキの指導を受け、ジュヌヴィエーヴ・ジョワ=デュティユーにも学ぶ。ヨーロッパのコンクールで次々に1位を獲得し、2004年にニューヨークのヤング・コンサート・アーティスツ国際オーディションで1等賞。同年、初の日本ツアーを行う。日本では「プロジェクト3×3」コンサートに出演。CDはnaiveから「マゼッパ~リスト作品集」などがリリースされている。

 ■CD「マゼッパ~リスト作品集」 リスト:ダンテを読んで-ソナタ風幻想曲/ラクリモサ(モーツァルト/リスト)/バラード第2番/愛の歌(献呈)(シューマン/リスト)、他。(キングインターナショナル)KKC-5178

 ■CD「リーズ・ドゥ・ラ・サール/ポートレート」 モーツァルト:ピアノ・ソナタ第9番より/ラヴェル:「鏡」より「洋上の小舟」/リスト:バラード第2番/葬送、他。(naive)V5310(CD+DVD)

ランキング