お金で損する人・得する人

児童手当の所得制限の厳格化で加速する「超少子化」

高橋成壽
高橋成壽

■所得を意図的に少なく申告できるの?

 所得制限にかからないよう、意図的に所得を低く申告することはできないのかと考える人もいるでしょう。自治体は毎年の年末調整や確定申告で年収を補足していますから、今の住まいに住み続ける限り所得をごまかすことはできません。

 引っ越しして所得を補足されていない場合は、前年度の所得証明を提出しないと児童手当が受け取れませんから、申告額をごまかすことはできないのです。

■児童手当の特例給付適用厳格化の影響

 筆者の周囲の都心に住む共働き夫婦の声や子育て環境を考えると、今回の児童手当の特例給付の廃止案は以下の課題が発生すると懸念しています。

(1)子育てモチベーションの低下

 世界的にみても子育てしづらい、子育てに優しくない国と言われている日本において、働きながら子育てする世代の苦労は政策担当者には伝わらず、当事者にしかわかりません。物価が上昇する中で、給与は低位安定しており団塊の世代のように一人の収入で家族を養えるほどの収入を得ることは困難です。

 今回の廃止案に関する報道をみて、国に対する怒りを感じ、子育て世代の働くモチベーションと子育てに対する意欲が減退していると感じます。

 廃止案は予算の付け替えにすぎず、子育てしやすい社会を作ろうという感覚を共有することは難しいでしょう。

(2)高所得者の負担増

 児童手当の所得制限に該当するような世帯の場合、社会保険料や所得税、住民税の納付額は日本の一般的な世帯よりも高額になっています。納税という側面で非常に大きな貢献をしている高所得世帯は、すでに児童手当の所得制限の結果として、特例給付の受給という扱いになっています。

 社会的にも責任の重い立場にある可能性の高い高所得者世帯にさらなる負担を強いる意味はありません。収入の多い少ないにかかわらず収入にゆとりをもって子育てをしている世帯などないのです。

 今回の廃止案は予算の付け方を誤っているという印象を子育て世帯に与えるに十分な悪影響を及ぼしています。

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