研究の先端にいる人の中にはもはや基礎研究と応用研究は絶えず表裏一体であり両者を分ける意味すら感じていないと言う人もいる。が、日本の若年層への科学教育の現場では明らかに基礎的な研究、応用を敢えて無視した純粋研究を尊ぶ傾向がある。しかし、高校生世代が研究活動をするに際して最も必要なのは、研究の楽しさをまず得ることだ。
「課題」が基礎研究と課題研究をつなぐ
研究の楽しさを知るためにも、手元で小さいながら成果が見えるもの、実際にものとしてつくりあげて世の中に「こんなものを作ってみました」「こんな課題を解決できます」と言えるものを生み出す経験が必要だ。「知りたい」「明らかにしてみたい」という興味関心を、世の中や身の回りの課題と繋げさらに研究を進めること。これが多くの高校生、そしてまずは我々が試行錯誤しながら整備してきた研究機関、Manai Institute of Science and Technology(以下、マナイ)の本場生徒に注力してほしいことだ。
例えば、塩分濃度によって液体を段階的に浸透させる膜の研究をおこなっている生徒がいるとする。水泳選手や水中作業員の健康管理ができていないという課題に触れ、水中での皮膚の汗を計測し選手や作業員がどのくらい水分を摂取すべきかを計測する仕組みの研究に発展させる。さらには選手や作業員の肌に貼る計測パッチのプロトタイプ制作までを行う、そんな基礎研究⇒課題設定⇒応用研究の流れをおこなってほしい。
現状の「教えて育てる」教育では、この基礎研究と応用研究をつなぐ課題を得ること、言い換えると「問いを立てること」は不可能だ。研究者である生徒の個人的な興味関心と、課題が起きている現場、そして先行してその課題に取り組んでいる本場との関わりなくしては、こういった流れは生み出せない。