なぜリーダーになれない? 東大卒の3分の1は社会で活躍できない理由
配信元:PRESIDENT Online 更新プレジデント誌の対談連載「弘兼憲史の『日本のキーマン解剖』」。今回のゲストは「東進ハイスクール」の創設者、ナガセの永瀬昭幸社長。永瀬社長は「東大を出ても活躍できていない人が3分の1ぐらいはいる」「受験の点数がどれだけ高くても、エゴイストである人はリーダーになれない」と話す。その理由とは--。
5000万を元手に東進ハイスクール誕生
【弘兼】「東進ハイスクール」が入ったナガセ本社は吉祥寺、僕の家のすぐ近くですよね。
【永瀬】ええ。今日の対談も吉祥寺でやろうと思ったのですが、先ほどまで京王プラザホテル(新宿)で社員研修会をしていました。新宿までご足労いただきありがとうございます。
【弘兼】現在の前身となる塾を永瀬さんがはじめたのは、東京大学在学中の3年生のとき。当時から起業家だったのですね。
【永瀬】自分から望んで起業したわけではありません。当時、実家からの仕送りがストップしてしまって。
【弘兼】どうしてですか?
【永瀬】大学2年生のとき、ラ・サール高校(鹿児島)時代の先輩が通っていた大学で退学処分を受けました。話を聞いてみると、明らかに不当。「義を見てせざるは勇なきなり」と反対運動をしていたら今度は私が留年してしまった。それを知った父親がえらく怒ったのです。
【弘兼】それで、自分で生活費を稼がなくてはならなくなったと。
【永瀬】最初は家庭教師で3人くらい見ていました。1人あたり週2回、2時間の授業だったのですが、お金を貰っているのだから、きちんとやらないと気が済まない。そうなると2時間でおさまらず、ひどいときは夕方5時から食事の時間をはさんで夜中の1時、2時まで授業を続けることもありました。
【弘兼】徹底的に教えていたのですね。
【永瀬】ええ。それで評判になりました。ほかの家から来てくれと頼まれたのですが、断っていたほどです。その延長線上で塾をやってみませんかという話がきました。
【弘兼】それが東進の前進ですね。最初はご兄弟ではじめたとか。
【永瀬】ええ。東大に通っていた弟、さらにラ・サール時代の後輩と一緒にはじめました。その後輩とは、今の農林中金副理事長の宮園雅敬。そして宮園君が次々とラ・サール出身の優秀な仲間を連れてきた。元財務省理財局長でTPP総括官だった佐々木(豊成)君やANA社長の片野坂(真哉)君らもいました。
【弘兼】錚々たる面子ですね。
【永瀬】そういう優秀な人間が教えると、やはり評判はよくなります。
【弘兼】でも、勉強ができるのと教えるのは勝手が違うのではないですか。
【永瀬】いやいや、そのレベルの連中は勉強もできますが、人間的にも魅力があります。だから生徒はみんな先生のことを慕っていましたよ。