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ラジオの献血呼び掛けに行列も…反動減を懸念、継続的協力どう確保
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献血推進キャラクター「けんけつちゃん」。けんけつちゃんの耳は血液でできており、献血の量が足りないと耳が小さくなるという(厚生労働省のホームページから) 福島で5月、ラジオ放送での献血呼び掛けに大勢の人が集まり、通常の約2倍の血液が集まったことが話題となった。良い話だが、一方で反動を心配する声も上がる。輸血を必要とする患者に血液を安定的に届けるには年間を通じて多くの人から継続的に献血をしてもらうことが大事なためだ。若い世代の献血が減る中、一時的でなく、継続的に献血してもらうにはどうすればいいのか。(平沢裕子)
「手術で大量出血の患者が出たため、200ミリリットル、120人分の血液が必要です」
先月14日、ラジオ福島は生放送の番組の中で、十数回にわたって献血への協力を呼び掛けた。その結果、県内5カ所の献血施設に長い行列ができ、血液は平日の約2倍の516本分が集まった。依頼した福島県赤十字血液センター推進課は「除染作業のため、福島県外から訪れていた若者らがラジオを聞いて駆け付けてくれたようだ。想定した以上に多くの方が協力してくれた」。
ラジオ福島ではこれまでにも同センターなどからの依頼で、生放送中に献血を呼び掛けており、今回が特別ではない。「200ミリリットル、120人分の血液」と聞くと驚くが、大動脈瘤(りゅう)破裂やがんの手術などでは1人に対して普通に使う量という。
ただ、一度に大勢の献血者が集まることで、その反動を心配する声もある。以前、東北地方の自治体で「大雪で血液が不足している」と地元メディアが献血を呼び掛け、多数の協力が得られたが、その2カ月後に献血者が集まらなかったことがある。自治体関係者は「たくさんの人の協力はありがたいが、反動で献血者不足になるのが心配」。
献血は「前回の献血からの間隔」「1年に献血できる量・回数」が決められており、両方の条件を満たさないとできない。前回の献血からの間隔は、400ミリリットル献血で女性16週間、男性12週間で、この期間は献血できない。また、手術などに使う「全血製剤」の有効期間は21日。一度に多量の血液が集まっても有効期間を過ぎたものは輸血用として使えない。常に新しい血液を提供してくれる献血者が必要となる。
厚生労働省によると、ここ数年、献血者数はほぼ横ばい。世代別では10、20代の減少傾向が顕著で、この10年間で3割以上も落ち込んでいる。
そんな中、岡山県赤十字血液センターでは平成25年度の10代献血者数が前年度に比べて34%増え、中でも高校生が62%増と大きく伸びた。その結果、全体の献血者数が8年ぶりに9万人を超え、21年度以降、他県の協力を仰いできた輸血用血液を自前で確保できた。受付時間の延長や献血施設近くの学校への協力依頼が功を奏したようだ。
「曜日によって高級アイスクリームを提供しており、これが口コミで広がった面がある。ただ、この方法が今後も効果的かは分からない。献血は継続して協力してもらうことが大事で、定期的に足を運んでもらうために仕掛けを工夫する必要がある」(同センター推進課)
厚労省は安定的に献血者を確保するため、今年度中に集団献血の協力企業を5万社、複数回献血者を年間120万人まで増加させる目標を立てており、キャンペーンなどで継続的な協力を訴えている。
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必要な量の血液を確保するため、厚生労働省は平成23年に献血の採血基準を見直し、男性に限り、献血が可能な年齢を400ミリリットル献血で18歳から17歳に引き下げ、血小板成分献血は54歳から69歳に引き上げた。65歳以上の場合は60~64歳の間に献血経験がある人に限られる。
献血した血液は赤十字血液センターでウイルス検査などを行ったうえで、血液製剤や血漿(けっしょう)分画製剤となり、患者の元に届けられる。
昔のテレビドラマなどでは家族や友人の血液をすぐに患者に輸血する場面があったが、今は緊急で呼び掛けて集まった血液をそのまま患者に輸血することは基本的にはない。