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【朝日新聞会見詳報(9)】「記事ねじ曲げること、まったくない」

ニュースカテゴリ:社会の事件・不祥事

【朝日新聞会見詳報(9)】「記事ねじ曲げること、まったくない」

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朝日新聞が吉田調書についての記事を取り消すとのニュースを映す、家電量販店のテレビ売り場=11日午後、東京都豊島区のヤマダ電機「LABI1日本総本店池袋」(蔵賢斗撮影)  (20:50~21:00)

 《記者会見が始まってまもなく1時間半になろうとしているが、質問が途絶える気配はない。質問に立った記者は『所長命令に違反 原発撤退』とした記事を誤報とし、取り消す判断をした朝日新聞の真意を問い始めた。記者と杉浦信之取締役編集担当のやり取りが数問続く》

 記者「誤報と認めたことはいいが、何を誤りと考えているのかがあいまい。命令はあったが伝わっていなかったことを誤りというのか、命令があったかどうかもさだかではないのか」

 杉浦取締役「命令があったことは事実と考えています。しかし、東京電力の職員が命令を知っていながら、意図して背いて第2原発に撤退してしまったという事実はなかったということです。つまり、命令が行き届かなかったり、混乱のなかでその命令を聞いた人たちまでがすべて第2に撤退したという印象を与える記事を書いたことが間違いだったと思います」

 記者「命令はあったとすれば、吉田所長の伝え方が悪かったのか、途中の人がきちんと伝えなかったのか-所内の問題があったという印象も残る。そもそも、命令があったと認定した根拠は何なのか」

 杉浦取締役「少なくともテレビ会議システムで、吉田さんの『第1原発のところに退避するように』という音声というか、が記録されていますので、テレビ会議を聞いた人には命令はあったと考えています」

 記者「命令を聞いた第三者に確認をしたのか。聞き取った他の原発でのメモだけが根拠なのか」

 杉浦取締役「現時点ではそういうことです」

 《杉浦取締役はテレビ会議を聞いた人のメモが『命令があった』とする根拠と説明した。しかし、記者は朝日新聞が根拠にしているとみられるメモの内容を示し、さらに質問を続ける》

 記者「メモでは『線量の低いところに行きなさい』と言っている。さらに、吉田調書では『線量の低いところがなければ、第2原発に行きなさい』と言っている。これは条件付きではないか。命令はあったと断定すると(命令の)伝え方や部下の問題という印象が残るのではないか」

 杉浦取締役「ご指摘の通りだと思います。最初の命令はあったと思っておりますが、そこから違反に結びつくかという吟味。混乱があったり、やむを得ない事情で第2原発に行った人まで違反としたことが過ちだった」

 記者「今後、その辺りを含めてさらに事実解明をする計画は」

 杉浦取締役「ございます」

 記者「信頼回復の委員会の中身を具体的に」

 杉浦取締役「私の後になる編集担当と私、各本社の局長を中心に考えていこうと思います。東京だけではなく大阪、名古屋、西部の編集局も心配していますので全社あげての参加を考えている」

 《全社をあげて信頼回復に取り組むことを宣言した杉浦取締役。質問は別の記者に移り、再び吉田調書報道の背景に見え隠れする“思惑”を問い始める》

 記者「吉田調書を普通に読むと、あのような報道にはならないと感じる。ある方向性が決まっていて、都合のいい発言があったのでその部分だけを引っこ抜いたという印象を受ける。慰安婦報道とまったく同じ構図ではないのか」

 杉浦取締役「都合のいい方向に記事をねじ曲げるということはまったくございません。いま、ご指摘のようなご批判があることは、この間で承知しているが、慰安婦報道も含めて事実に忠実に記事を書く方針、当たり前でありますが、ござい…」

 《声がうまく聞き取れないが、事実に忠実に記事を書く方針が『ございません』とは言わないだろう》

 《朝日新聞の撤退報道については、海外メディアなどが吉田氏や福島第1原発の作業員を批判した》

 記者「報道の被害を受けたのは(収束作業にあたった)福島50(フィフティー)の方々や吉田さんのご家族だと思うが、こういった方々に直接の謝罪することは考えているか」

 杉浦取締役「何らかの形で、どういう対応ができるのか真剣に対応して参りたい」

 《別の記者に質問が移る》

 記者「膨大な調書でいろいろな論点があるなか、なぜ撤退問題にこだわって、ひっかかったのか」

 杉浦取締役「社としてというよりは取材班の問題意識から出てきたと考えています。限りある紙面では、第一報は訂正させていただいた撤退だが、その後の続報、朝日新聞デジタルの大量の(記事)ではそれ以外の論点も取り上げている」

 《あくまでも『取材班の問題意識』を強調する杉浦取締役。質問は32年にわたって掲載を続けた慰安婦問題の「吉田証言」にも及んだ》

 記者「吉田証言が嘘だというのは学会でも常識になっていた。なぜこれだけ遅れたのか、90年代に訂正することはできなかったのか」

 杉浦取締役「1997年3月に一度、慰安婦問題の検証をしています。その時は吉田証言について真偽が確認できなかったという形で総括し、その前ぐらいから吉田証言については紙面化していませんでした。しかし、正式に取り消すまでにこれほど長くかかってしまった。遅きに失したとのご指摘は免れないと思います」

 記者「なぜ、気がつかなかったのか」

 杉浦取締役「90年代にどういった議論があったのかは、今回の新しい第三者委員会も含めて検討しますが、改めてわれわれ自身も検証したいと思います」

 《たたみかけるように経緯を問う記者に、杉浦取締役は苦しい回答に終始した》

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