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規制委、「凍土遮水壁」に懸念 政府・東電推進も「安全性、有効性は未確認」

ニュースカテゴリ:社会の事件・不祥事

規制委、「凍土遮水壁」に懸念 政府・東電推進も「安全性、有効性は未確認」

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原発の汚染水対策  東京電力福島第1原発事故の汚染水問題で、政府と東電が建設を進める「凍土遮水壁」について、原子力規制委員会が「(冷媒が漏れ出す可能性など)安全性と有効性を確認しておらず、認可していない」と慎重姿勢を示していたことが16日、分かった。有力な学会も政府に凍土壁設置反対の文書を提出していたことも判明。政府や東電は6月にも本格工事に着手、今年度中の完成を目指すが、規制委が建設に反対すれば、汚染水問題は長期化する。

 規制委は18日に開かれる検討会で、東電に凍土壁の意義を明確にして報告するよう要求する。凍土壁が大規模かつ長期的に使われた例は世界的にもなく、安全性と長期的な実用化が議論の焦点となる。

 凍土壁は、「汚染水の抜本的な抑制策」(経済産業省)として、政府が昨年9月に国費約320億円の投入を決定。政府や東電は実効性を確かめるための実験に着手した上で、今年3月、規制委に凍土壁設置の申請書を提出した。

 しかし、規制委関係者は「政府決定したことは理解しているが、規制委として凍土壁を認可したわけではない」と、安全性に不安要素があり検討が必要だと強調。規制委検討会のメンバーである東北大の阿部弘亨(ひろあき)教授も「維持費の問題もあり、凍土壁には反対の立場だ」と疑問を呈している。

 さらに「日本陸水学会」(会長、熊谷道夫・立命館大教授)が昨年末、「凍土壁では放射性物質を長時間完全に封じ込めることができないだけでなく、より大きな事故を起こす可能性が高い」とする文書を内閣府原子力災害対策本部に提出していたことが判明。熊谷会長は取材に対し「総会で決めたことで、学会の総意だ」と話した。

 凍土の量は約7万立方メートルで、過去最大の東京・九段下で行われた都営トンネル工事(昭和55年)の約4万立方メートルをはるかに上回る。学会は、文書に研究論文などを添付し、「凍土を安定した状態で維持することは困難。凍土溶解で多量の溶液が海などに流入する」と有効性に懸念を示す。(原子力取材班)

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 用語解説

 凍土遮水壁 福島第1原発では、壊れた原子炉建屋に山側から地下水が1日約400トン流れ込み、放射性物質に触れて新たな汚染水を生んでいる。このため、凍らせた土で壁をつくることで水の流入を防止。建屋を囲むように、凍結管を埋設し冷媒を循環させることで凍土を造る。総延長は約1500メートル。

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