クルマ三昧
高齢者の免許返納より「運転不適合者の免許剥奪」こそ安全な社会への近道
木下隆之
では、なぜそうならないのか…。
おそらく「事故0」などはお題目に過ぎす、「所詮無理ですよね」とする考えが根底にあるのだと思う。もっと過激な言葉で言えば「自動車は便利なものだから、多少は事故の犠牲になる人がいてもしかたがない…」と考える人がひょっとするといるかもしれない。
そうでなければ、事故を頻繁に起こした運転不適合者すら、数年の謹慎期間をやり過ごせば再び免許証を手にして街中を堂々と走っても許される…なんて理不尽はおこらない。あきらかに精神的に粗暴で凶暴なのに、運転免許証は比較的簡単に手に入る社会は歪である。飲酒運転常習者も同様だ。「この人、また事故を起こすのだろうなぁ…」と思える人が、身の回りにいるはずである。だがそれを許してしまう。その見て見ぬ振りの社会こそが危険なのだ。
最近、街を歩くのも緊張する。信号を渡るのも、ちょっとした勇気がいる。もちろん青信号を守っても、歩道を歩いていても、どこかから運転不適合者が突っ込んでくるのではないかと不安で仕方がない。
自分の身は自分の身で守る? そんな社会が正常だとは思えない。
【クルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は原則隔週金曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【試乗スケッチ】はこちらからどうぞ。