クルマ三昧
高齢者の免許返納より「運転不適合者の免許剥奪」こそ安全な社会への近道
木下隆之
だがその考えに、素直に首を縦に振る気にはなれない。安全運転が不可能になったドライバーは運転すべきではないとする意見には大賛成だが、それを高齢者という年齢で一括りにするのには抵抗がある。というのは、精神や肉体はひとそれぞれであり、生まれてからこれまで積み重ねてきた月日の数だけで運転が危険だとする考えには賛同しかねるのだ。
ペダルの踏み間違えや逆走を原因とする事故が頻繁に報道されている。だから高齢者は危ないと短絡的には考えたくなる。ある意味ではそれも事実だろう。視野、反射神経、動体視力などはおそらく年々低下するものだろうから“安全運転度”は低下するのかもしれない。
だが、若年であっても運転不適格者は少なくない。つい最近でも、けして高齢者とはいえない53歳の男性がパトカーを振り切るために逆走をして検挙されたばかりだ。それは一例に過ぎないが、古くから暴走行為による事故は後を立たない。飲酒による事故もなくならない。高齢者だから危険なのではなく、年齢問わず運転不適合者が危険なのである。
「高齢者運転免許証返納」ではなく「運転不適合者免許証返納」が正しいのではないだろうか。そもそも運転不適合者への免許証発給が許されることが危険なのである。いまいちど原点に立ち返って、免許証発給システムを議論すべきだと思う。