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神戸空港に暗雲…廃港に現実味?! 「最悪のタイミング」でスカイマーク破綻

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神戸空港に暗雲…廃港に現実味?! 「最悪のタイミング」でスカイマーク破綻

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経営破綻したスカイマークの機体=神戸空港  神戸空港を暗雲が覆い始めた。ただでさえ赤字体質から抜け出せないなか、発着枠の7割を占めるスカイマークが経営破綻に伴い減便を決定、再建途上で完全撤退の事態になると致命傷となりかねないためだ。管理・運営する神戸市は関西国際空港と大阪(伊丹)空港の運営権を取得した企業連合への運営権譲渡に期待するが、採算性が疑問視される関空、伊丹に加え、神戸を抱え込む余裕はないとみられる。スカイマークが去り、買い手がつかない可能性もあり、専門家からは「廃港に迫られるかもしれない」との声が上がる。(橋本亮)

 最悪のタイミング

 「どうしてこんな最悪のタイミングでやるのか」

 空港運営に詳しい関西学院大経済学部の野村宗訓教授は、こう首をかしげる。

 最悪のタイミングとは、神戸市が神戸空港の運営権売却への調査費として平成27年度の当初予算案に約2億円を盛り込むことが明らかになった2月2日のこと。

 神戸空港で運航する1日30便のうち7割の21便を占め、空港運営の主柱ともいえるスカイマークが1月28日に経営破綻した直後だったからだ。

 スカイマークは経営破綻を受けて不採算路線の減便を決め、前日の神戸発着の3路線で一時的な減便にも乗り出していた。関係者によると、一部新聞の報道で発表前に漏れる形になったが、神戸空港の先行きに懸念が広がっている最中という間の悪さが目立った。

 神戸市の久元喜造市長は「運航は従来と全く変わらないと受け止めている。神戸をうまく活用してもらうことがスカイマークの再生にもつながる」と楽観視するが、支援企業の意向や経営再建の進捗次第で不採算路線からの撤退に向かう可能性は否定できない。

 野村氏は「スカイマークの完全撤退もあり得ない話ではないだろう。そうなれば神戸にとっては致命傷となり、廃港を迫られるかもしれない」と指摘する。

 危機感の裏返しか

 神戸市は「スカイマークの破綻は運営権売却とは直接関係はない」(空港事業室)と説明している。

 事実、27年度予算案の編成作業はスカイマークの経営環境が厳しくなっているとはいえ、まだ破綻が想定できない昨年から続いており、調査費の計上との因果関係はないとみられる。

 むしろ、この時期に動き出したのは、関空と伊丹の運営権売却に向けた手続きが進むなかで置き去りになることへの危機感の裏返しとみる向きもある。ある航空業界関係者は「空港事業から手を引きたいという意図があるかもしれない」と話す。

 というのは、神戸空港の経営は厳しい状況が続いているからだ。

 2月に開港9周年を迎えた神戸空港は神戸市が584億円かけて建設された。当初は国の補助分を除く267億円を着陸料や地方交付税などで返済する計画だったが、日本航空の撤退や機体小型化などの影響で着陸料収入が予測を大幅に下回り、21年度からは赤字の状況が続いている。利用者数も19年度の約297万人をピークに減少。25年度は約235万人で、当初見込みの403万人(22年度)を大幅に下回っている。

 神戸空港は関空の補完と位置づけられ、海上空港で24時間運用可能にもかかわらず、1日30往復、運航は国内便に限定されるなどの規制がある。

 そもそも経営の自由はあまりなく、収益をあげにくい状況下で頼みの綱だったスカイマークの破綻だ。撤退という逆風が吹き付ければ経営が立ちゆかなくなるのは確実。運営権売却によって危機を乗り切ろうとする思惑があっても不思議ではないのだ。

 大きな誤算も

 神戸市は「関空、伊丹の両空港の運営権を譲渡された会社に神戸空港の運営権も譲渡することが一番有力で常識的な選択肢」(久元市長)として、一体運用の優位性をアピールする。3空港を一体的に運営することで神戸空港の規制が必要なくなり、経営に自由度が増すと考えているようだ。

 新関西国際空港会社が関空、伊丹の運営権売却に向けて入札条件を定めた実施方針にも「関西全体の航空輸送需要の拡大を図る目的から、(運営権取得者が)神戸空港の管理者と交渉を行うことができる」との内容が盛り込まれている。

 ただ、そこにも誤算が生じている。関空、伊丹の運営権売却自体が2兆2千億円にのぼる最低落札価格と45年間という長期の運営に企業が及び腰となり、手続きが難航。新関空会社は当初2月を予定していた1次入札の締め切りを約3カ月延期し、企業側と入札条件を協議することになった。

 利用者を大きく伸ばしている関空や安定的な収益が見込まれる伊丹ですら厳しい視線にさらされている。

 野村氏は「どの企業が関空、伊丹の運営権を取得しても赤字体質でスカイマーク撤退による一段の経営悪化というリスクを抱えた神戸空港に手を出すとは思えない」との見方を示す。

 さらに野村氏は言う。

 「そもそも寄らば大樹という考え自体が間違っている。スカイマークの破綻を機に規制撤廃への働きかけを強めたり、茨城、静岡などの地方空港との提携による路線拡大、チャーター便の誘致など、運営権を売却する前に神戸空港がやるべきことはまだまだある」

 ピンチをチャンスに変えるか、さらなるピンチを招くか。これからどの針路を進むかで神戸空港の未来は大きく変わってくる。

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